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2005年8月 8日 (月)

税負担

6月21日に税制調査会が「個人所得課税に関する論点整理」を発表して、
「サラリーマン増税だ」、と非難を浴びた。誰でも増税はいやだろう。
でも、今年の「経済財政白書」にも分析があるように、
ここまで税負担が低い先進国も少ない。先進国で最も税負担が低い
国なのに、少しでも負担が上がりそうになると、大きな反対が
生じる。どうしてだろう。

第一の理由は、税金の使途が国民が望むものではないことではないだろうか。
「税金が高くなっても、教育が充実するわけではなく、老後も安心できない。
なにも仕事をしていない公務員の給料になっているだけではないか。
不必要な公共事業にばかり使われているのではないか。」
「不必要なことしかしない政府なら、税金も払いたくないし、
政府はもっと小さい方がいい。」という政府の仕事の中身に対する
不満だ。

第二の理由は、一般の人にとって税金と社会保険料の区別があまり
ついていないことではないだろうか。
「税金が先進国の中で低いというのは信じられない。毎月、
源泉徴収でこんなに取られている。」という意見が多い。
でも、源泉徴収票をよくよく見ると、
所得税の負担額よりも社会保険料の負担額の方が多い人が
多いのではないだろうか。
社会保険料は所得比例の部分が多いので、低所得者でも
かなりの負担率になっている。しかも、高齢化で社会保険料率が
高まることが予想されている。

もし、これが低い税負担しか政治的に耐えられない理由であれば、
正しい解決策は、2つである。

第一は、政府支出の中身を変えることだ。どう考えても、
不要な仕事をしている公務員は多い。産業別の付加価値や
従業員数の分布と、それを管理する公務員の担当産業別分布の間には
大きな乖離がある。仕事がなくなって部門の人員を減らすことは難しい。
削減されそうになった担当部門は、削減に反対するための
様々な政治的な行動を取ることが、成長部門よりも楽だ。
というのは、もともと仕事がなくなっているから
簡単に余剰人員を政治活動に振り向けることができる。
これに対し、成長部門を担当している部門は、
ただでさえ忙しいので、政治活動に時間がさけない。
結局、不必要なことをする部門だけが肥大していくことになる。
このような政治的な政府部門の歪みをなくす方法を考えることが
政府支出の中身を変えることにつながる。
また、政府部門間の人員の配置転換や希望退職のシステムを
機能させることも必要だ。批判されるべき天下りも多いかもしれないが、
民間企業のように割増退職金の制度をうまく使えば、
結果的に必要なことしかしない小さな政府が達成できる。
ほしいことをしてくれる政府であれば、
もっと税金を払ってもいい、という人も現れるかもしれない。

第二の社会保険料の問題は、年金や医療保険を個人勘定に
していくことで解決できる。こうすれば、社会保険料は
一種の貯蓄であるから、自分の貯蓄をするのに
負担が重い、という人はいないだろう。結局、使うのは
自分なのだから。
「それでは、社会保険のもつ低所得者への再分配機能が
ないではないか。」という人もいるだろう。この部分は、
税金をもとにして、低所得者に限定した給付をするか、
一律固定給付をすることで解決すべきで、社会保険に
所得再分配機能を期待するのは間違っている。もともと
社会保険料は逆進性をもっているのだ。
比例保険料だし、保険料に上限もある。
現在の高齢者をみても、高い公的年金をもらっているのは、
現役時代に高い賃金をもらっていた人だ。

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コメント

こんにちは。
非常にまとまりがなくて申し訳ないのですが・・・

①「独身者に重税を課せば、少子化は止まる」という考え方があると思います。
私は独身者なのですが、ひそかにこの考え方にはけっこう賛成で(笑)、今でも独身者のほうが多少重税ですが、もっと差があってもいいのかな、とは思ったりします。
ただその一方で、産む産まないは個人の勝手かもしれません。そういう領域には国はあまり介入すべきではないですが、ある程度望ましい姿に誘導する知恵が経済学にはあるのではないかと思います。

②個人的には、可能な限り企業への課税を減らし、企業がもうけやすい形が良いのではないかと思います。
バブル以後におこったさまざまの悲しい出来事を見るにつけ、この国はまず企業が繁栄しなければどうしようもない、と思います。税金高くてもいい、社会保険料高くてもいい、でも、不安だけは取り除いてくれよ・・・これがかなりの人の思いではないでしょうか。で、そのために「個人の能力・適性以外の理由によるリストラ不安が少ない」あるいは「失業してもあまり贅沢言わなければすぐにどこかで雇ってもらえる」状態であって欲しい、それには企業が儲けること・・・と思ってしまいます。無駄に儲けさせてやる必要はないでしょうが、その障害はなるべくないほうが良いと考えます。しかし法人から取る分が減れば、基本的には個人から取らねばならないでしょう。

③「低所得者への再配分機能」を担うものとして、やはり消費税は良い税金かな、と思うのですが・・・いかにも「安易」と捉えられてしまうという欠点がありますが・・・。

どれも政治家さんが選挙公約にしたら落選しそうなことばかりですが(笑)これらについて先生のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

投稿: すとんこ606 | 2005年8月 9日 (火) 15時27分

コメントありがとうございました。どれも重要な論点だと思います。まず、第3番目のコメントについて、答えてみました(8月9日のエントリー)

投稿: 大竹 | 2005年8月 9日 (火) 21時35分

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» 大竹文雄先生に質問してみた [stonco606の日記(仮)]
大竹先生のブログで、かねてからいろいろな思いを持っていた「税負担」の問題を取り上げられていましたので、勇気を出して(笑)質問してみました。 こんにちは。 非常にまとまりがなくて申し訳ないのですが・・・ �「独身者に重税を課せば、少子化は止まる」という考え方があると思います。 私は独身者なのですが、ひそかにこの考え方にはけっこう賛成で(笑)、今でも独身者のほうが多少重税ですが、もっと差があってもいいのかな、とは思ったりします。 ただその一方で、産む産まないは個人の勝手かもしれません。そういう領域には... [続きを読む]

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