« シンポジウム・出前授業 | トップページ | 中学生の質問への回答2 »

2005年11月16日 (水)

中学生への回答

 中学生に授業をした時、多くの質問をもらいました。私からの質問への回答の一部を紹介したいと思います。

 給料の実態についてのデータをみることで、みなさんは、つぎつぎと疑問をもったようです。これはとてもいいことです。

 中学校で学ぶことには、普通「正解」があります。しかし、研究の最前線では、「答えがまだわからないこと」が研究されています。「答えがわからない問題なんて、問題そのものも難しいのではないか」と思うでしょうが、経済学の問題は、問題そのものはだれでも考えつくことです。それを論理的に説明し、その説明方法が正しい、ということをどうやって示すのか、というのが科学的な方法なのです。こういう能力が、ますます重要になっています。

 機械が故障したら「どうして故障したのか」、ある商品が売れたら「どうしてその商品が売れるのか」というように「なぜ」という疑問をもって、それにどうやって答えるか、ということが大事な能力になっています。

 どうして男女で所得に差があるのか。どうして年齢が高くなると賃金があがるのか。どうして学歴で賃金が違うのか。どうしてあんなにお金をもらう人とそうでない人がいるのか。ニートやフリーターは増えるか。自分たちが就職するときには仕事はあるのか。こうした疑問をもつことはとても大事です。科学は、このような疑問をどうやって説明するかということからはじまります。

 たとえば、多くのみなさんが疑問に思った「男女間賃金格差」が存在する理由は、現在でも経済学の重要な研究テーマです。いくつかの代表的な説明を紹介しましょう。

 第一番目は、単純に男女差別です。でも、これだけだとうまく説明できないのです。もし、男女差別によって男性と同じ能力をもった女性の賃金が低かったとしましょう。どの会社も男女差別をしているとします。そこで、男女差別のない社長があらわれたとすれば、この社長は女性ばかり雇うことで、同じ能力なのに他の会社で差別しているから安い給料で女性を雇うことができます。すると、この会社の利益はその分高くなります。この企業はどんどん成長します。それをみた別の男女差別意識のない社長も真似をするはずです。結局、男女で同じ能力である限り、女性差別をする会社は、男女差別をしない会社に負けてしまいます。

 もし、十分に会社どうしが、競争しているのであれば、男女間の賃金格差はなくなります。この議論が正しいとすれば、男女間賃金格差があるのは、会社の間の競争が十分でない場合になります。日本でも、女性をあまり雇わない企業の業績は悪いという研究結果が出ています。イギリスのサッカーリーグの研究で、黒人差別をするチームは、人種差別をしないチームより「弱い」ということを示したものがあります。

 第二番目は、能力を高めていくためには、同じ企業で長くつめと続けなければならないという条件があれば、男女間で賃金格差が生じる原因になります。女性は、出産や子育てで仕事をやめるケースが多いので、それが仕事の能力を高める上で不利になってしまうのです。育児休業をとったり、保育園に預けることがもっと簡単になれば、子育てで仕事をやめる必要がなくなりますから、この理由による賃金格差は小さくなるはずです。

 第三番目は、男性の方が女性よりも長時間働いたり、疲れる仕事をしているのかもしれません。 他にも理由は考えられると思います。

 経済学の研究は、このような仮説を考えて、それが正しいかどうかをデータを使って確かめていきます。本当は理科のように実験できれば一番いいのですが、社会で実験するわけにもいきません。「男女差別をする会社としない会社を作って実験してみる」ということができません。それで、実際のデータから本当の「因果関係」を見つけ出すのです。

|

« シンポジウム・出前授業 | トップページ | 中学生の質問への回答2 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/126445/7141227

この記事へのトラックバック一覧です: 中学生への回答:

« シンポジウム・出前授業 | トップページ | 中学生の質問への回答2 »