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2006年5月

2006年5月29日 (月)

大学入試問題

「日本の不平等」の中の文章が、今年の横浜国立大学教育人間科学部国際共生社会課程の総合問題に出題されたそうだ。私の文章はともかく、出題内容がすばらしい。私の作った仮設例からジニ係数を計算させたり、グラフを解説させたり、私の主張をまとめさせたりしている。確かに、大学に入ってもっとも必要とされる能力だ。受験生は、こういった問題にどの程度答えられるのだろうか。知りたいものだ。

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2006年5月28日 (日)

R25

R25のブックレビューに「経済学的思考のセンス」が紹介されました。経済学を本格的に学び始める前に、ここで紹介されているような本を読んでおくといいと思います。そうすれば、無味乾燥に思えるグラフや数式を使った経済学も少しは楽しくなると思います。

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5月の日経「経済論壇から」

5月28日の日経新聞に、5月の「経済論壇から」が掲載されました。金融政策の議論と政府の規模に関する論説を紹介しました。

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「行動経済学: 経済は「感情」で動いている」

弾さんから感想がほしい、という要望がありました。実は、私の所属は、「大阪大学社会経済研究所 行動経済学研究センター」ということで、行動経済学は私の専門の一つです。ニューロエコノミクスの実験も進めています。

さて、友野典男氏の『行動経済学』は、行動経済学の啓蒙書として、いい本だと思います。プロスペクト理論、双曲割引、フレーミングといった行動経済学の標準的な議論に加えて、生まれたばかりのニューロエコノミクス(神経経済学)の最近の研究動向まで、一般読者向けに分かりやすく書かれています。数多くの文献が興味をもてるようにうまく紹介してあって、巻末には、本文で紹介された研究がすべて文献リストとしてまとめてありますから、深く研究したい人は、直接、論文にあたることもできます。ニューロエコノミクスの研究動向を啓蒙的に紹介したのは、この本がはじめてではないか、と思います。

類書としては、多田洋介氏の『行動経済学入門』(日経新聞社)があります。この本も読みやすいですが、多田さんの本の方が、もう少し教科書的です。友野さんの本は、豊富な実験結果の紹介が読み物として面白いと思います。

伝統的な経済学の仮定が間違っているということがある、というのが行動経済学で明らかにされてきています。ただ、合理性を前提とした伝統的経済学が全て間違いというわけでもありません。今を極端に重視してしまい、後で後悔するという双曲割引型の時間選好を前提とした時に、消費者金融の規制はどうすべきか、というのは、後悔しない合理的な人を前提にした時とは大きく異なってきます。でも、人間は非合理だから何でも政府が規制すべきだという議論にはなりません。

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2006年5月14日 (日)

毎日新聞・青野由利さんの社説

青野由利さんの5月14日の毎日新聞の社説には、私も同意することが多い。平成17年度版の国民生活白書のデータをもとに、青野さんは

「今の状況は、かつて当たり前のように男女間に存在した格差が、男性の間にまで広がっただけかもしれない。であれば、性別を超えた共通認識のもとに、「不当な格差」を是正するための土壌が、ようやく整ったともいえるのではないだろうか。」

と指摘している。

ただ、私は不当な格差が解消されたとしても、男性内の格差拡大は残るだろうと思っている。 

男女雇用機会均等法や技術革新の恩恵を受けた女性は、市場労働にフルタイム労働者として昔よりもはるかに活躍できるようになった。一方、体力という比較優位があった男性は、技術革新でその比較優位がなくなった。むしろ、技術革新はIT能力やコミュニケーション能力の比較優位のあるものが市場労働で求められるようになった。こうした能力は、男女というグループ間で差があるというよりは、男性内、女性内での差が大きい。

女性の中にもフルタイム雇用者という市場労働に向いている人とそうでない人がいるように、男性の中にも様々なタイプがいる。かつてなら、男性であまり市場労働に向いていない人でも、市場労働での需要が大きかった。しかし、今は市場労働に向いた女性たちが活躍している。市場労働にあまり向いていない人たちは、市場労働以外の働き方に比較優位をもっているはずだ。

女性の働き方が変わってきたのだから、男性の働き方が変わってくるのも自然だろう。やがて、人々の価値観も変化していくのだと思う。ただ、そのスピードが、経済環境や技術の変化に比べてゆっくりなので、様々な社会問題として顕在化しているのではないだろうか。 

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2006年5月 6日 (土)

森永さんの批判

森永卓郎さんが『世界』の5月号で、私への批判を書いている。論点は2つ。

1つは、大竹が使っている統計は『家計調査』で、家計簿をつけさせるため貧困層が含まれていない。統計に表れていない格差が広がっているというもの。

もう一つは、規制緩和によってタクシー運転手になれた人がいるかもしれないが、リストラの存在やタクシー運転手の低所得そのものが問題だ、というもの。

最初の批判については、まず技術的な問題から。私は『家計調査』だけでなく『所得再分配調査』や『国民生活基礎調査』でも分析している。これらの2つの統計は、家計簿をつけさせていないし、調査しているのは福祉事務所だ。

それに、私の論点は、「どの統計をみても所得格差は拡大しているが、最近の若年層の格差拡大を除けば、傾向的な拡大の理由は高齢化だ」というものだ。『所得再分配調査』のジニ係数が急拡大していることの理由を示しているのだ。

統計に表れない格差の拡大の可能性については、私は否定していないし、実際、生涯所得の格差を「現在の所得」よりも正確に表す消費の格差が勤労層で拡大していることもきちんと書いている。

次に、2番目の論点について。タクシー運転手の賃金低下は、規制緩和の前から発生していることから、その原因は不況だとみるのが自然だというのが、私の議論だ。森永さんもリストラそのものが問題だと主張しているのだから、それならタクシーの規制緩和と全く無関係な話で、私の議論と同じではないか。不況を引き起こしたことが問題だというなら、理解できる。

(追記) 田中さんからのトラックバックにたいする感想:
   田中さんの議論は、論点がすり替わっていると思う。「格差拡大を引き起こしたのが、規制緩和かどうか」という問いに対して、私の答えも森永さんの答えも、田中さんの答えも全て「規制緩和ではなく不況だ」という点で一致している。それなら、論争もなにもないではないか、というのが私の感想だ。不況対策に規制緩和が有効だ、という議論をしているわけではない。格差拡大の原因が不況なら、不況を克服することが格差対策になる。技術革新やグローバル化が原因なら教育訓練を充実することが格差対策だ。規制緩和が原因で、格差が拡大していて、それを是正すべきということなら、規制強化が格差対策だ。4月30日の日経「経済論壇」で書いたことは、そういう議論の混乱を指摘して、整理したつもりだ。
 もし仮に「格差拡大がタクシーの参入規制の緩和によってもたらされた」という主張なら、私に対する反論になる。もしそうなら、格差拡大を防ぐ対策として、「参入規制を再び強めるべきだ」、と主張すればいいのではないか。私の反論は、タクシー運転手賃金低下は、規制緩和の前からはじまっている、というものだ。タクシー参入規制の規制強化をしたところで、格差縮小策にはならない、のではないか。

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所得集中度の歴史的推移

所得格差の指標の一つに、所得順位の上位1%の人の所得の合計が国民全体の所得の何%を占めるかという指標がある。この数字が大きいほど、少数の金持ちが、一国の所得を独占する程度が大きく、所得格差が大きいことになる。ノースウエスタン大学の森口さんが、この指標を用いて明治期以降の日本の所得格差の推移を推計している。

戦前は日本の格差は非常に大きかったこと、戦争を通じて急激に低下した日本の格差は戦後ほぼ一定で推移していることが示されている。意外なのは高度成長期に所得が平等化したというよく知られた事実がこの指標では観察されないことだ。高度成長期は、低所得層の所得の上昇が大きく、高所得層の所得にはあまり大きな影響を与えなかったのだ。金持ちへの所得集中という意味では、明治期は最初から格差が大きい。アメリカの近年の格差拡大がすさまじいこともわかる。ただし、所得中・下位層の分配の推移については、この研究では分からない。それに、2002年以降の日本がどうなったのかも。

Moriguchi, Chiaki and Emmanuel Saez (2005),“The Evolution of Income Concentration in. Japan, 1885-2002, Evidence from Income Tax Statistics,” (pdf)

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