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2006年7月21日 (金)

経済財政白書へのコメント

「経済白書」から「経済財政白書」に名称が変わって、政府の経済政策の宣伝媒体となっていた「経済財政白書」は、昨年からかつての「経済白書」のような経済分析中心のスタイルに戻ってきている。最新の分析手法とデータを用いて多方面から日本経済の現状が分析されている。白書を読めば、現在の日本経済の状況がよく理解できる。ただし、手法も含めて完全に理解できるのは、経済学の専門的訓練を受けたものに限られるかもしれない。

第一章では、景気回復が長期間続いている背景とデフレ脱却の可能性が議論されている。金利の予測や金利上昇の経済への影響が分析されていることは、白書の執筆時期が日銀のゼロ金利解除の前であったことを考えると興味深く、タイムリーな分析になっている。

景気の回復の理由の一つは、白書で明らかにされているようにデフレにもかかわらず賃金の下方硬直性がなくなってきたことだ。しかし、賃金の下方硬直性が本当になくなったのかどうかは議論があるところだ。正社員の賃金の下方硬直性がある程度残っていたからこそ、企業は正社員を減らして賃金が安い非正規社員を増やした。それが経済成長にはプラスになったけれども、その結果、格差が生じてきているという側面がある。これだけ長期に景気回復が続いても景気回復の実感がなかなか得られないのは、それが原因ではないか。

 第二章では、企業行動について、様々な観点から分析されている。その中で、製造業では雇用調整速度が2000年代に次第に上がってきたこと、その背景には債務規律が効いてきたという議論がある。日本では、赤字というような明確な経営危機でないと解雇が認められにくい。そのため、経営危機が顕在化するまで解雇できなかったというのが実情ではないか。また、従業員重視の企業は業績がいいという分析があるが、業績がいいからこそ長い間労働者を雇えるという面もあるので、因果関係を証明するのは難しい。残念なのは、M&Aに関する分析があまりなされていないことだ。MAを経済理論とデータにもとづいて評価してもよかったのではないか。

 第3章では、経済格差の問題を最新のデータを用いて、多面的に分析している。日本の格差拡大要因としては高齢化や世帯規模が重要だということ、最近では若年層における格差拡大が重要だということが、最新のデータで改めて確認されている。ただ、所得の格差はあまり拡大していないが、白書に示されている通り、消費の格差は30代、40代でかなり拡大傾向にある。所得の格差は一時点で見るが、消費の格差は生涯所得や資産の格差なので、これが本当の格差だ。その消費の格差が30代、40代を中心に、過去10年間で見ても拡大しているので、これが格差社会の現実ではないか。また、米国での格差拡大の実態とその理由についての議論を比較する形で、日本の格差の議論を行っておけば、日本の現状をより深く理解することができたのではないだろうか。

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