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2006年10月23日 (月)

池尾先生の異論

「週刊 東洋経済」の10月28日号に慶応大学の池尾和人教授が「消費者金利規制で大竹教授に異論あり」という論説を書かれています。近く、きちんと反論させていただく予定です。読者のみなさんには、「週刊東洋経済」の7月8日号の池尾教授の記事、私の10月7日号の記事、10月28日の池尾教授の記事の3つを並べて読んで頂ければ幸いです。

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コメント

はじめまして。fujiと申します。「週間東洋経済」読みました。先生の反論が楽しみです。できればブログ上で議論して頂ければありがたいのですが・・・。

投稿: fuji | 2006年10月25日 (水) 20時48分

すみません「週刊東洋経済」でした。

投稿: fuji | 2006年10月25日 (水) 22時24分

すみません「週刊東洋経済」でした。

投稿: fuji | 2006年10月25日 (水) 22時24分

 私も、楽しみにしてます。なお、『週刊ダイヤモンド』06年8月12日・19日合併号の拙稿データ・フォーカス「消費者金融市場の規制問題 留意すべき3つの特徴」も参照して下さい。私のポイントは、現在の消費者金融業者のかなりの部分がプレディターだということを無視して議論をしないでほしいということです。
 これまで限られた紙幅でしか書いていないので、十分に理解していただけないところがあるのやむを得ないと思います。ただし、なかなかまとまって議論する時間的余裕が持てないのが残念です。まあ、できるだけ生産的に議論しましょう。予備知識として、須田慎一郎『下流喰い』ちくま新書はみておいて下さい。
 

投稿: 池尾 和人 | 2006年10月27日 (金) 22時39分

池尾先生、コメントありがとうございました。生産的な議論だけをしていきたいと思います。私の反論は、池尾先生の異論は私の議論に対する異論になっていない、ということです。
 私は上限金利規制に反対しているわけではありません。その論拠を経済学的に整理しましょう、というのが趣旨です。
 貸し手の問題は、私の論説でも触れています。貸し手独占、借り手の信用力に関するバブルという論点は、貸し手側の問題です。借り手の部分だけを議論しているのは、全体のわずかです。
 プレディターという議論は、正しいかもしれませんが、私の借り手の信用力に関するバブルの話に入ってしまうと思います。ちなみに、バブルの説明で用いた「ババ抜き」という言葉は、須田慎一郎氏の『下流喰い』にある表現です。
 プレディターが成立するためには、借り手側の双曲割引がなければ不可能ではないかと思います。借り手側が時間非整合的行動をとるという前提ではじめて、消費者金融業者はプレディターとしてやっていけるはずです。消費者が時間整合的に行動をするという前提で、プレディターとしてやっていけるのであれば、その経済学的根拠を教えて頂きたいと思います。もし、そのような根拠がないなら、池尾先生の論説は「異説」になっていないと思います。
 もし、双曲割引を前提としないなら、上限金利規制の根拠は、貸し手独占になります。ところが、貸し手独占の場合には、過剰貸し出しではなく、過小貸し出しが問題になっているはずです。この場合に、上限金利を引き下げると貸出額が増加することで経済厚生が上昇することになります。
 したがって、過剰貸し出しが問題だというのであれば、異なる論拠が必要になります。双曲割引が問題であれば、上限金利規制や自己破産を容易にすることが解消策になりますが、根本的には、子供の頃から金利教育をきちんとすることが必要です。
 もっと詳細な議論は、別の場所で書きたいと思います。

投稿: 大竹 | 2006年10月28日 (土) 10時05分

 10月28日号の記述をみていただければ分かるように、「『感情論の議論が中心ではなかったか』と言われると、…異論がある」ということで、私の言いたかったのは、経済的な議論の詰めは確かに不十分かもしれないが、感情論というのは失礼でしょうという話です。別に、双曲割引等の議論が間違っているとか思っていません。もちろん、借り手に行動経済学的なバイアスがあれば、貸し手はつけ込みやすくなります。
 ただし、行動経済学的なバイヤスがみられるかどうかの前に、借り手が貸付条件や借り手が将来とるであろう行動に関して正確な情報をもっているかどうかが重要だと考えられます。借り手が①完全合理的で、かつ②完全情報下にあれば、略奪的貸し付け行為は成り立たないといえます。この場合、①もそうですが、②が当然の前提であるかのように論じるのは正しくないと思います。拙稿で引用したように、略奪的貸し付けとは「借り手の無知」につけ込む行為です(それゆえ、事前の貸付条件に関する説明義務の強化に拙稿の後段で言及しています)。
 なお、前に WikiPedia をみたときには、Predatory lending is the practice of exploiting a potential borrower's ignorance for profit. と書いてあったのですが、現在は編集されていて、Predatory lending is the practice of convincing borrowers to agree to unfair and abusive loan terms. となっています。
 事後的には時間非整合的とみられる行動だとしても、その原因を借り手の選好に求めるか、情報不足に求めるかでは、取るべき対応に関する含意はかなり変わってくるでしょう。借り手の情報不足が貸し手による情報操作(情報の不開示や選択的開示)にあるとすれば、なおさらです。子供の頃から金利教育をきちんとすることに全く反対ではありませんが、借り手の行動の問題性をもっと考慮していただければと希望します。
 誘惑に引っかからないほどの強い意志を常に持っていれば、問題は起きないというのは真理でしょう。しかし、だからといって他人を誘惑するような行動が許容されてよいということにはなりません。法と経済学の標準的な立場からすると、コースの定理的なことはあるとしても、基本的にはパワーのある方(この場合には、貸し手)に問題解決の責任を課すというのが望ましいという話になると思います。大竹さんの議論は、これとは逆になっているような印象を受けました。

投稿: 池尾 | 2006年10月28日 (土) 12時23分

 ご免なさい。先の投稿の第2パラグラフの1行目の「借り手が将来とる」は「貸し手が将来とる」の間違いです。

投稿: 池尾 | 2006年10月28日 (土) 12時49分

 ご免なさい。先の投稿の第2パラグラフの1行目の「借り手が将来とる」は「貸し手が将来とる」の間違いです。

投稿: 池尾 | 2006年10月28日 (土) 12時50分

池尾先生、ありがとうございます。
「経済的な議論の詰めは確かに不十分かもしれないが、感情論というのは失礼でしょうという話です。」私はマスコミなど世間一般の議論の話をしているのであって、池尾先生が参加された懇談会のことを言っているのではありません。それに、この話は経済学とはなんの関係もないので生産的な議論ではないと思います。
 「誘惑に引っかからないほどの強い意志を常に持っていれば、問題は起きないというのは真理でしょう。しかし、だからといって他人を誘惑するような行動が許容されてよいということにはなりません。」私は、そのような違法行為が許されるとは主張していません。
 規制の根拠を経済学的に整理することが、経済学者の役割だと思います。「貸し手の情報操作が過剰貸し出しの原因である」ということが池尾先生のポイントで、それが私の整理には含まれていなかった、という理解でいいでしょうか。

投稿: 大竹 | 2006年10月28日 (土) 13時40分

 こちらこそ、議論につきあってくれて、有り難うございます。確かに世間に感情論が多いことは確かですが、そうした議論ばかりではないことも了解してください。また、「規制の根拠を経済学的に整理することが、経済学者の役割だと思います。」というのは大賛成で、だから、こうした意見の交換をしていると理解して下さい。
 それで、大竹さんが「そのような違法行為が許されるとは主張してい」るとは私も露とも思っていませんが、実証的な観点からいって、そのような違法行為が一般的なので、分析において考慮すべきだということがいいたい点です。その意味では、上記の理解でいいかと思います。
 なお、過剰貸し付け行為については、借り手の信用度の関する情報が貸し手に十分知られていないから起きる現象だと大竹さんは理解していると読めました。本当は借り手に返済能力がないのに返済能力があると誤認して貸し手は貸し付けているという理解だから、「バブル」という言い方になっているのだと思います。しかし、普通の合法的な取り立て行為の範囲内では回収困難であることは、大方の貸し手は認識して行動していると思います。
 大手業者は、自分ではそんな違法な取り立てはしません。したがって、それ以上の収奪が困難になったとみられると、中小の業者に借り換えさせて撤退します。より「厳しい」取り立てをする中小業者も、一定の収奪の後、さらに「厳しい」取り立てをする零細業者に回し、最後は全くの違法収奪者であるヤミ金業者(か自殺)に行き着くことになります。その前に、法的整理等によって脱出できた者は幸いです。
 こうしたビジネス構造になっていると私は考えているので、「借り手の側の情報を整備する」だけでは、過剰貸し付け行為がなくなるとは思いません。「プレディターという議論は、正しいかもしれませんが、」大竹さんの「借り手の信用力に関するバブルの話に入ってしまう」とも考えません。改めていうと私のポイントは、情報操作を含む貸し手の行動とその背後にあるインセンティブ構造を経済学的に分析することが、規制の根拠を経済学的に整理するために第1にやらなければならない作業だと考えるというものです。
 もちろん、借り手の側に何の問題もないと考えているわけではありません。あまりにも無知であったり、非合理な行動をとる借り手が多くいることは否定しません。そうした無知や非合理性がプレディターにつけ込むスキを与えていることは確かです。しかし、スキを見せるなと注意するのは当然だとしても、スキにつけ込もうとする輩をどうするかを優先的に考える必要があります。貸し手は業者でプロで、借り手はアマです。どちらに問題解決の責任を負わせるべきかは、法経済学的には明らかです。

投稿: 池尾 | 2006年10月28日 (土) 15時12分

池尾先生、ありがとうございました。一点だけ。

「本当は借り手に返済能力がないのに返済能力があると誤認して貸し手は貸し付けているという理解だから、「バブル」という言い方になっているのだと思います。」
 →この点は、違います。バブルには合理的バブルも非合理的バブルもあります。私は「合理的バブル」の場合も多いと思っています。借り手に信用力がないことは貸し手が分かっていても、バブルがいつはじけるか分からない場合には、「ババ抜き」で貸すことができます。借り手の信用情報が不完全である場合には、非合理的バブルが発生しやすいと思います。
 

投稿: 大竹 | 2006年10月28日 (土) 15時25分

 もうそろそろ、とりあえず終わりにしたいと思いますが、私ももう一点だけ。
 「本来価値に比べてこんな割高な価格で購入するのはバカだが、さらに高い価格で購入するもっとバカなやつがいると期待できるなら、購入するのは合理的になる」というのを、資産バブルに関する Greater Fool Theory と呼んでいると思います。それに習うと、過剰貸し付けはもっと酷い収奪者が後に控えているから貸すという話だと私は考えているので、私の仮説は、Greater Predator Theory といったところですね。
 どうもお疲れ様でした。

投稿: 池尾 | 2006年10月28日 (土) 16時44分

fujiです。須田慎一郎『下流喰い』ちくま新書を読んでる内に大変な議論をされていたのですね。大竹先生は「消費者金融業者の利益率が長期間高いままであるというのは、なんらかの参入障壁があることを意味しているのかもしれません。」とはじめに述べられていましたが、それすなわち須田氏の言う悪魔的ビジネスモデルでそれは池尾先生の仰る「Greater Predator Theory」であるという理解でよろしいでしょうか。

投稿: fuji | 2006年10月28日 (土) 17時17分

英語をカタカナで表記することに限界があるのは承知した上で言うのですが、'predator'はプレデターと表記すべきでは?プレディターだと何を表しているのか分かりにくく、wikipediaの項目の話があるまでプレディターがpredatorを表していると確信できませんでした。

投稿: mori | 2006年10月29日 (日) 03時30分

確かに、シュワルツェネッガー主演の映画の邦題表記は「プレデター」だから、そう書いた方が分かり易かったでしょうね。でも、CD-ROM版の「ランダムハウス英語辞典」で発音を改めて聞いてみたんだけれども、やはりdaの部分は「デ」よりも「ディ」に近く(少なくとも私の耳には)聞こえました。ということで許して下さい。

投稿: 池尾 | 2006年10月29日 (日) 12時33分

fuji様へ。悪魔的ビジネスモデルであろうと、参入障壁がなければ、超過利潤が長期間存在し続けることはないはずです。
 超過利潤の存在は、悪魔的ビジネスモデルでなくても参入障壁があって貸し手独占であれば、説明できます。消費者が合理的で正確な情報をもっていて、貸し手独占であれば、過小貸し出しの状況にあって、超過利潤が発生していることになります。
 逆に、貸し手独占のもとで、借り手の非合理性(+貸し手の情報操作)があれば、ある種の「過剰」貸し出しが生じる可能性があります。
 また、一部の消費者金融が他の消費者金融との間の借り手の信用情報量の差を利用して、借り手に対して合理的バブルとも言える過剰貸し出しを行うことです。この場合も、情報力という参入障壁が超過利潤の源泉だと思います。

投稿: 大竹 | 2006年10月29日 (日) 19時11分

悪魔的ビジネスモデルはそれが「悪魔的」だからこそ誰もくだんの消費者金融には参入できない(というよりしない)と思ったのですが、もう少し勉強します。ご解説ありがとうございます。

投稿: fuji | 2006年10月29日 (日) 20時00分

以下説明は、前提とされる借り手側の双曲割引に関する本筋の議論とは外れます。
調べなおすことなく、記憶だけで書き込みする失礼をお許しください。

法社会が認める規制の範囲内で、法規制にcompliablyに営業されることが、predatory lendingというのでしょうか。
predatory lendingは、criminalな犯罪とまではされない。しかし裁判所は、不法に得た営業利益だとして、1990年代終わりから、2000年代初めに、不当利得返還請求させる決定をした事案がいくつもありました。返還請求訴訟は、Household, Wells Fago Mortgage, Citifinancial(対象となった営業は、買収前のAssociates Corp. of America)のabusive lendingに対して行われてた。消費者保護の争いは、FTCマターなので、争いは、行政処分命令を承認する訴訟だったのではないでしょうか。いずれも各社の数年間にわる、数百回に及ぶ繰り返し継続されたabusive lendingに対して、数億ドルの返還請求が認められています。刑事訴訟事案ではありません。
North Carolina州では、 1999年にanti-predatory lending lawプレデタリー貸付禁止法を制定し、その後、確か半分を超える州が、同様の法を制定しています。多くの州は、1994年Riegle-Neal 法により national banksにinterstate banking業務が承認する法が認められた以降、州内operating subsidiariesを通じて、業務が展開されていき、多くの大手銀行が参入したた、住宅ローンやカード業務の半分以上は、他州で営業する大手銀行でした。そうした金融機関の州内の業務運営の規制監督当局は、州の金融機関監督局ではなく、検査監督権限は、連邦金融監督機関であるOCCに委ねられていました。OCCは、とってもpredatory lendingに甘く、幾度と批判されましたが、監督下の金融機関行動を規制することがありませんでした。州政府は、州政府に、州民の消費者保護を守る権益があるとして、立法に頼った。1996年ころから、訴訟が急増していき、立法の正当性を支えた。 
さて、法律では、具体的にどういう貸付行為がpredatoryの対象とされ、規制されたでしょうか。
7つくらいの行為があげられていましたが、また判例上も問題になった重要なabusive lendingの阿漕な貸付類型をいくつか拾いますと、
loan flipping
home stripping -- unable to pay, foreclosure
mandatory arbitoration clause
negative amortization
non refinance clause
大雑把にいえば、手数料稼ぎだけのためにローンを組ませるloan flippingと、債務者の支払能力でなく担保の清算価値foreclosure に依拠して貸付けして、家を取り上げるstripped loan, それを支えるための訴訟禁止特約に特徴付けられます。
ローン・フリッピングとは、モーゲージ貸付を利用して、必要のない借り換えをさせ、upfront feeを含め、借入に相応でない巨額の手数料を徴収するやり口。たとえば、1万ドル程度の借入が必要なのに、15万ドルのモーゲージをくんで、総額15000ドルくらいの手数料を取る。説明は読んでも、そんなに手数料がかかるとは思えない。800ドルだった以前のローンの月の支払が、借り換えで数千ドルになってしまうケースもある。また3年以内に借り換えができず、借り換えしたら、10%以上とられるという合意があることが通常。
home strippingとは、
predatory lendingがsubprime home mortgageについて発生しており、prime rateでモーゲージを組めないsubprime mortgagorが対象とされた。アメリカでは、prime層のcredit scoreは、740以上、特に年貸倒率が0.1%の住宅ローンは、800点以上だった。700あたりでは、0.5%で、loanのlifetimeでは、2%台だった。サブプライム層は、680-580、年貸倒率は、3~8%の範囲にあった。90年代半ば、OR datamining の発達、数理統計学の応用で、bayesian modelやカルマンフィルター にもとづく、Bad loan のodds スコアリング推定の精度がemperical studyやvalidation testによって、検証されるにつれ、subprime市場開拓が急激に進みました。90年代前半では、ほぼゼロのsubprime mortgageは, home equity loanをともない、580までもが家をもてるようになり、市場は40兆円ほどに増加したとみられます。(私の記憶ですので、データを知りたいひとは確認ください)。
正規分布を考えてみますと、700点以上だったprime層が、580まで下がってきた。対象となる市場となるpopulationは、倍増したのです。そしてそこに、national banksのoperating subが進出した。有名なのは、Wells Fargo Mortgageですが、それに限られたわけではありません。儲かる市場が開拓されたのですから。
こうしてsubprime mortgageに手を出せば、loan flippingで、返済ができなくなれば、担保に頼ることになります。すなわち、unable to pay支払能力がないことを知りながら貸付して、債務者の返済能力を見ないで担保で返させるforeclosure〔競売のよる換金処分)金融手段と定義されています。すわなち、年金生活の婆さんから、家を取り上げる目的でなされたローンが出てきたのです。
home equity strippingとは、住宅価格とモーゲージの間にプラスの価値があり、それに対して、第2抵当を組ませるのですが、2-3年をたったときに、急に支払額が増えたりしたとき、家を売って返させる方法で、これも横行したやり口です。州は、家が売られ、街がスラム化すると運動を起こすほどでした。
mandatory arbitorationは、ローン契約に、紛争のさいは、裁判所に訴訟提起する権利を放棄し、調停を強制することの合意です。憲法に認められた権利を契約で放棄させる文言については、裁判所で幾度となく、その禁止条項の有効性が争われましたが、当事者自治に関して、不当な制限ともいえず、裁判所も容易には干渉できず、手数料稼ぎだけの abusive阿漕な貸付に対して、債務者は訴訟さえも起こす権利を失っていた。

殆どが、お婆さん、未亡人事案が多いのではないか。ただfinancial literacyが問題にされたケースはなく、ローンを借りるとき、手数料の大きさは認識できるものではなく、それが問題だとして、法により、手数料は金利に含めて表示する商品設計が要求された。truth lending actはそれを求めていると。

州predatory lending禁止法を制定するにあたり、せっかくsubprime層にも住宅提供できるようになったにもかかわらず、subprime lendingをdepressするような信用収縮の影響が心配され、そうした影響があるようでは、規制を制定できないという議論や、連邦監督機関の規制が州規制に優先するとして、OCCは反対していました。
禁止法で付どれだけの悪影響が出るのかは、当初から課題となっていましたが、NC州は、2002年証券化プール分析により、禁止規制が導入した州でどのくらいの金額に影響があったかのhome mortgage機関の学者分析を提示し、影響がなかったと結論づけています。反論は、データ出所を明かさない、Georgetown MBAのCredit Research Centerから出されています。

さて、こうした判例、法律で定義された、predatory lendingは、上の定義説明したように、
- 債務者の利益やニーズはどうでもよく、貸し手の手数料稼ぎのためのローンであり、それが金利には反映されておらず、どのくらいの手数料がかかるか、説明が詐欺的手法によっていたこと
- 支払能力など審査することはなく、清算価値がある住宅の価値のみを見て、貸し出しをすること。
- それらを支えるために、調停での紛争解決を強制し、訴訟権限を奪ったとこ。
loan flipping
home stripping -- unable to pay, foreclosure
mandatory arbitoration clause
ということになります。

池尾先生のいうところの、判例や法のよるpredatory lendingの射程範囲にはいずれにもあてはまらないと考えます。阿漕な回収をして取り立てる行為を意味されているのでしょうか。わが国消費者金融の貸付行為には、詐欺的に金利に反映させない巨額の手数料をとっているとか、家を取り上げるためのローンだとか、訴える権限を制限したということもありません。

なお、深刻ばな多重債務解決を金利規制で対応できるか、上限金利引下げの影響について、立法するための事前の調査として、経済学者の市場評価に関する意見や実証分析は、参考にされてしかるべきでしょう。
ただ実態の正しく理解し、共通して認識するところから始まらないと、前提や仮説において、一致していないまま、議論がかみあわないようにおもえます。
借り手側の双曲割引や貸し手の阿漕な貸付、債務者の逆選択など、学者は言われますが、どれだけの債務者がその対象になるでしょうか。市場への影響を考えるうえで、債務者像の理論的モデル化は、あるひとたちの経済行動や事象を理解するのを助けますが、金利引下げや貸付方針に介入することが、どの程度の影響ががでるか、どの程度問題解決に意味があるかなど、推定に役立つように説明していただければ、と期待します。

借入件数2社以上だけで、800万人、12兆円の借入金額がある市場です。年収の1/3貸付規制で、3.7兆円もの市場が消滅し、借入総額がそれぞれ1/3になるまで回収だけになり、信用収縮をおこします。詳細は、東洋経済-金融ビジネス10/25(2006Autumn)、p.16-17に借入件数別、借入総額別の利用者数、借入金額合計、月返済額/収入比率があります。

投稿: 吉行誠 | 2006年10月29日 (日) 22時06分

 最初に書いたように、(とくに平日は)時間的余裕がなくて、十分な応答はできかねますので、ご寛恕下さい。それで、大竹さんに1点だけですが、ワン・ショットの静学的な枠組みでのみ考えない方がよいと思います。
 いったん、借り手が短期間では返し切れないような額を貸し付けてしまうと、「期限の利益」を喪失すると(すぐに全部返せといわれると)その借り手は直ちに行き詰まってしまうことになるので、当該の借り手をlock inしてしまうことができます。Lock inしてしまえば、時間をかけて収奪していけばよいということになります。だいたい、5年くらい取引関係が続くと、利息制限法の金利だと元利返済が終わっていることになるのに、出資法の上限金利だと元本がほとんど残ったままということになるようです。
 返済能力というのの定義は難しいですが、短期的な借り手の返済能力の範囲内に貸し付け額がとどまっていると借り手は逃げられるので、逃がさない(lock inする)ためには、短期的な返済能力を上回る貸付(その意味での過剰貸し付け)をすることが、借り手の生存が一定期間以上期待できる場合には、収奪的貸し付け者にとって合理的になります。
 もちろん、借り手がlock inされてしまうことを予見していれば、こうしたことは回避できるわけですが、この点には借り手の行動バイヤスや無知が関わっているのでしょう。

投稿: 池尾 | 2006年10月30日 (月) 12時10分

実証研究でなく、多重債務者に陥るケースのモデル設計をなされるとき、具体的にどういう状況か、正しく理解する必要があります。
池尾先生の取り上げられたケース(年18%金利では5年で完済されるが、29.2%では、ほとんど元本が減らない)は、以下の場合を想定されているとみられます。

金利18%のとき、月のminimum payment(約定支払い額)を当初借入額x2.55%とすると、元本は60ヶ月目に返済が終わります。
金利29.2%のとき、月のminimum paymentを当初借入額x2.55%とすると、元本は60ヶ月目にまだ84.5%残存しています。

これは、途上貸付において、いっさいの追加借入、リボ借入をしないという前提での計算です。
18%金利で、5年かかっても、期中に返済された金額の半分の額を12箇月ごとに、リボしていれば、2.55%の払いでは、5年経過後の残高は、50%になり、半分しか返済されていません。

従来の慣行では、50万円を貸して4%のminimum paymentです。100万円の場合には、3.2-3.5%のようです。
それを超えると、大手では3%にしている業者もあり、金利27.375%でminimum payment3%では、64ヶ月に、minimum payment3.1%で60ヶ月になります。

そもそも商品設計上、信用枠内でのリボが認められた商品ですから、データ上、40%の債務者が、3ヶ月に一度は数万円(2‐5万が2/3以上)のリボします。3社から借りていれば、毎月することになる。こうして元本は減らないままになってきます。

モデルを単純化することは容易な理解をできますが、現実社会では、リボがないという想定をおいて考えることはできません。
各社与信(貸付)方針上利用されるスコア・カードをもっていますが、behavior scoreが消費者の返済行動に重大な影響を与えています。これは途上の与信モニターや途上の貸付に利用される信用チェックの方法ですが、minimum paymentを支払いできない債務者は、返済能力が低いとみなされ,現状の点からマイナス査定がされます。たとえば、for most recent six monthsにおいて, 4回以上(ある一定の回数)、約定支払額不足をしたとしましょう。それがかろうじて、金利だけを上回っている場合には、与信枠利用を停止させます。すくなくとも、6回中、2回程度にしておかないと、信用枠に追加して借りようと申しでても、却下されてしまいます。利息不足支払いは、延滞と同様の扱いのため、発生すれば、信用枠停止になり、リボ借入でATMは利用不能にされてしまいます。
優良客は、約定支払額の満額を払う客で、半分以上の客は、ちょうどminimum paymentを支払い、20%が、minimum paymentを超える金額を払いますので、元本償還が進みます。もっとも、それらの多くが、おまとめ完済によって説明されるという現実ではありますが。

したがって、リボが出来る限り、借入額が返済することは、容易でありませんが、それでも半分くらいの客は、2年ほどで、完済していき、3年で2/3が完済しており、残った客の単価は増加していきます。そうすると借入2社以上の債務者800万人のうち、260万人は、根雪化して、日々残高が増加しています。池尾先生の想定されるケースは、市場全体の半分の客について説明されるモデルということになるでしょうか。もっとも半分かどうかは、借入件数、借入総額によって異なりますが、件数や借入総額が大きい客は、1件あたりの単価が小さくなるので、同様に2年で60%以上が完済しているとみられます。

どうしても元本を減らそうとする業者ほど、minimum paymentを高めにしますが、そうすると商品設計上、競争力が劣ります。100万円を3.5%と設定する場合、これは50万円2社から借りて、月に4万円返済するより、3.5万円ですみますので、同じ払い額で(支払能力がかわららず)、多額に借入ができ、商品シフトが起こりえます。4万円の返済能力があれば、4/.035=114.3万円の負債を借入する能力があることになります。minimum paymentを0.5%調整するだけで、負債額が200万円であれば、30万円の追加貸付が可能になるのです。
もし、金利18%として、minimum payment2.55%でよければ、100万円でなく、月3万円支払えるのであれば、117万6500円借り入れられます。
これが問題となり、2006年2‐4月ころの、金融庁の懇談会で、ミニマム・ペイメント規制が重大な課題になっておりました。

29%の金利で100万円を借りて、minimum payment2.55%=25,500円となりますが、そのうち金利だけで、初回月には、24333円となりますので、元本が減りようがありません。だから3.2%ということになるので、2.55%でよいという業者はありません。したがって、それだけ貸付元本が増加しないのです。

こうして、大手業者は、minimum paymentを低くして、返済能力がのある客にたいして、多額貸付を進めていった過程は、数年間で、(口座数が増えることなく)ローンの平均単価が、10‐15万円増加していることでわかります。(金融ビジネス4/25,2006号、吉行誠)

さて、貸付の慣行を無視して、モデル化はできません。また何%がそういう債務者により、占められているか、それが全体の10%なのか、50%なのかで大きな違いです。借入2社以上の800万人で見れば、80万人について論じているのか、400万人に対してかは、経済政策、救済対策を考える上で、重大な差があります。

ここで、池尾先生のいうpredatory lendingの定義が明確にされました。lock inによる29%グレーゾン金利の収奪ということですので、そのように定義して、アメリカのように、loan flipperやequity stripperでの金利に入れない手数料の略奪や住宅の略奪を意味されていないことがわかりました。

これは、どういう状況かといえば、すでに説明の通りで、2.55%で貸す業者は、リース系や信販系カード会社が、12-15%で200‐300万円貸し付けるケースは聞きますが、消費者金融でそこまで低いminimum paymentは聞きません。もっとも1社では、60ヶ月で返済が出来ないケースがあるといいますから、200万円貸して、minimum payment2.8%くらいがあるということでしょう。

借り手が、lockinされることを避けられないか。これは自分から、リボしたり、追加借入しているので、その申し込みを信用力から受けられるとなれば、元本が減ることはありません。また業者は拒否しないので、もっとも弊害ある貸増マーケティング営業がなされる現実もあります。

こうしたポートフォリオ評価のためには、scoringのためのdata miningや証券化に利用されるvintage pool やstatic pool performance分析が利用されています。アメリカpredatory lendingの市場に与えた影響を政府関係機関が検証したのも(以下レポートなど)、そうした分析手法であるとされています。したがて、金融庁がそうした手法を知らなかったということはないでしょうから、立法にあたり、そうした分析結果をお持ちでしょうと一般国民は信じております。
Roberto G. Quercia, Michael A. Stegman, and Walter R. Davis, Assessing the Impact of North Carolina's Predatory Lending Law, Univ. North Carolina, Housing Policy Debate Vol.15 issue 3, FANNIE MAE Foundation (2004)

Michael A Stegman, Roberto G. Quercia, and Walter R. Davis, NC's Anti-Predatory Lending Law: Doing what it's supporsed to do: A Reply, Joint Center, AEI-Brooking Joint Center for Regulatory Studies (Nov.2003)

Dennis E. Gale, Joseph C. Cornwall Center for Metropolitan Studies, Rutgers, Subrprime and Predatory Mortgage Refinancing: Information Technology, Credit Scoring, and Vulnerable Borrowers, Berkeley Program on Housing and Urban Policy (UCB) , Institute of Business and Economic Research, Fisher Center for Real Estate and Urban Economics (2001)

Elizabeth Renuart, An Overview of the Predatory mortgage lending Process, National Consumer Law Center, Housing Policy Debate Vol.15 issue 3, FANNIE MAE Foundation (2004)

投稿: 吉行誠 | 2006年10月30日 (月) 15時01分

上記のスコアリングが利用されることの与える影響の説明に不足がありましたので、追加させていただきます。

behavior scoreが消費者の返済行動に重大な影響を与えています。application scoreとは違い、行動すこアとは、途上の与信モニターや途上の貸付に利用される信用評価の方法ですが、初期延滞alert機能などを発揮し、延滞発生を抑制するために利用されます。
たとえば、区分上延滞ですが、利息額支払い不足が、-20ポイントとして、5日延滞2回で-10、7日が1回で-10としましょう。支払っても払えないのですから、支払い意思があっても、客観的能力不足が明かということで、場合によりマイナス点を大きくします。
minimum paymentが2万円だとして、毎月1.5万は必ず入金している債務者はどうでしょうか。きちんと返せているから、マイナス点はつけないでしょう。たた追加与信を求めたとき、そもそも2万円を払えないのですから、支払余力affordabilityテストは慎重にされることになります。

債務者は与信枠が停止してしまったら、返す一方になるので、そうした事由がトリガーされないよう注意して管理します。
だから、結論として、多くの債務者が、信用枠利用を止められてしまう利息だけを返すという行為ではなく、ミニマムペイメントをまず払って、そのあとで、同額をまたどこかで借り入れるという行動を起こすのです。そうすることで、利用枠は停止しないし、ミニマムペイメントを払い続けているので、信用の高い安心の区分に扱われます。
こうした客が、1/3を占めているのでしょう。信用がよいと判定されるので、ミニマムペイメント率はどんどん小さくなり、借入額は、2年の間に、40万円から90万円になっていきます。

すなわち根雪化といわれる現象は、金利によってだけ発生し継続するのは説明されません。
18%金利になっても、そうした現象が消える前提がなくなるわけでもありません。ただ池田先生の説明の通り、債務者にとって、ある一定の残高を超えたら、そういう現象が始まるのでしょうから、借入金額と返済余力の関数でしょうか。

投稿: 吉行誠 | 2006年10月30日 (月) 15時59分

池尾先生の略奪仮説について

一般の雑誌に意見を公表されておられるので、失礼ながら、コメントされていただきます。

池尾先生が主張される貸し手の略奪行為について、私の理解では、貸し手は、グレーゾーン金利を長期間にわたって享受するのをもくろんで、返済能力を超えるほどの与信して、高額のまま与信金額を張り付かせ、長期間にわたり、できるかぎRの大きな利益を得ようとする貸し手の行為を、predatory収奪的行為の範囲に定義されるとします。

グレーゾーン27.375%(Acom, Aiful、武富士など大手の平均的約定金利)で、利息制限法上限+9.375%で、100万円を貸して、期中、元本を1円も回収せずに、利息だけ払った場合のミニマムペイメントを、当初月の利息支払い必要額から計算しますと、22813円となります。この月額を毎月支払っていれば、元本は永遠に回収がありません。
さて18%の金利で、100万円借りて、同額の22813円を毎月返済すれば、72ヶ月で完済されます。その間に払った金利総額が、64万1895円。それに対して、27.375%のローンで72ヶ月間に払った金利は、164万2500円。
100万円余分に払っても、まだ元本は一円も償還されておらず、残元本は100万円のまま。そして金利は永遠に膨らんでいくということになります。
すなわち、6年間債務者が生きて(破産しないで、債務整理しないで)払い続けていてくれて、72ヶ月めに、破産免責を受けて、元本全額が回収不能になっても、年18%の金利で貸したと同じ効果となる。

問題は、6年間生かせる金額がどの分岐点かを見極めなければなりません。
貸しすぎれば、早く倒れてしまうので、18%分岐点よりも損がでる。
6年はけっこう長いです。

さて、ここで1000人の債務者を対象にして、0年から25年での生存率(月を年単位にまとめて)を考えてみますと、
6年目に50%となる分布を以下のように想定します。(中央値5.88、モード4.4)

経過年 貸倒人数 年貸倒率  年後生存者数
1年...11人...1.1%... 989
2... 53... 5.5%...  936
3... 93... 10.6%.... 842
4... 116... 15.1%... 726
5... 122... 18.8%... 603
6... 116... 21.9%... 487
7... 103... 24.4%.... 384
8... 87... 26.5%... 296
9... 71... 28.3%.... 225
10... 57...29.8%.... 169
11...44....31.1%... 125
12... 33... 32.3%.... 91
13....25...33.3%.... 66
14....19....34.2%... 48
15...14... 35.0% ... 34
16 ...10... 35.7% ... 24
17... 7 ... 36.3% ... 17
18... 5 ... 36.9% ... 12
19... 4 ... 37.4% ... 8
20 ...3 ... 37.9% .... 6
21 ...2 ...38.3% .... 4
22 ...1 ...38.7% .... 3
23 ...1 ...39.1% ... 2
24 ...1 ...39.4%... 1
25 ..0 ..39.7%..0.41人で、1万人に対してなら4.1人

年貸倒率は、生存債権数比。  
これであれば、約半分の513人が6年目までに倒れていることになります。

この場合、1年目を迎えた債権だけの年貸倒率をとってみると、11人で、1.1%、2年目に貸倒れた債権の比率(分母はそれまでに貸倒れた債権を除いた残存債権数に対する比率)は、53人で、5.5%、同様に3年目が93人で10.6%、4年目が116人で15.1%、5年目が122人で18.83%、6年目が116人で21.9%と高くなりますが、6年目までに半分以上の債権は生存していません。
さてここで営業者は、年間で5000人、2.4ヶ月ごとに1000人ずつ(毎月年416.7人ずつ)、新たな貸付ができるとし、どの月に発生したローン債権プールも、同様の生存率分布をしていると仮定します。10年間、業務を継続していたら、債権ポートフォリオはどうなるか想像できるでしょうか。
残存口座数は、30,124件まで増加します。
そのうち、
1年以内に貸付けられた債権が、25,145件
2年以内     20,342件
3年以内     15,931件
4年以内     12,064件
5年以内      8,803件
6年以内      6,140件
7年以内      4,021件
8年以内      2,371件
9年以内      1,109件
となり、それぞれの経過年数に相当する上記貸倒率を乗じて、合計を取り、3万124件の債権の年貸倒率を出しますと、おおざっぱに14..5%になります。
すなわち、この生存率分布を想定しては、営業はなりたちませんが、このケースでは、倒れたときには、元本回収がゼロである状況を想定していました。現実には、月約定返済率は、2.28125%ではなく、3%を請求していれば(3万円)、元本返済は、64ヶ月目に完了しています。
他方で、それでは、元本を長く据え置いて維持する戦略はこれでは取れません。
27.375%金利でminimum payment3%のときには、
1年経過後には、902,279円に、
2年目 773,679円
3年目 605,390円
4年目 384,787円
5年目  95,611円
ですから、当初の略奪目論見を達することはできません。

なお、金利だけをもらって上記戦略が成功するかどうか、経過月数別生存率しだいですが、アクチュアリを応用して、過去実績からどの程度、生き延びるか実証テストが可能であれば、することは出来るでしょう。現実には、想定分布よりも、もう少し生き延びる債務者の比率が高いでしょう。

しかしながら、現実には、100万円以上債務者でも、個々には3%以上の払いを求められておりますから(どこから借りて返してくるかは別として)、長期間収奪のための残高は長く維持されません。
通常、証券化プールでは、証券の元本返済は3年ほど据え置かれますが、ある一定のパフォーマンス悪化事由が発生すると、所与の格付を維持するため、早期償還トリガーが引かれ、返済が強制されます。たとえば、通常の貸金債権プールでは、月3.5%くらいの元本返済率(MPR)トリガーが設定され、それを3ヶ月連続して下回ったりすれば、元本据え置き期間が撤廃され、返済事由となります。100万円以上の債権が多く含まれますと、3%以上で設定されることが一般的ケースです。
MPRが所定のレベルを下回ると、回収期間が延びることになり、回収金は、格付会社が準備するeconomic streee(貸倒が3倍になったり、金利は18%しか回収できないとか)に晒され、結果として超過担保掛け目(証券発行額に対する担保プール債権総額)を増加させない限り、格付が維持できないので、所定のレベルに達すれば、早期償還させることになります。MPRトリガーは、当初から低く設定できますが、その場合には、ストレスに晒される期間が長いため、超過担保が大きくなります。
そんな説明はどうでもよいでしょうけれど、ここで認識されなければならないのは、MPRは一般に3%を上回って設定されているという事実です。中には4%のプールもあります。返済金には、金利もありますので、+2.28%(=27.375/12)、合計すると、MPR3%とは、5%以上の回収金がない限り、すぐにでも返済になってしまうということです。

通常のポートフォリオでは、与信枠満額に貼り付けていれば、minimum paymentからの元本返済率は小さくなります。
たとえば、100万円、27.375%で借りて、3万円が月約定支払額とすれば、金利は、初月22815円(2.2815%=27.375/12)必要ですから、元本充当部分は、7185円しかありませんので、MPRは0.7185%しかありません。
そうすると、MPR3%の大きさのイメージがつかめたかと存じます。
もっとも、minimum payment月約定支払額どおりに支払うひとは、50%ですが(minimum payment3万円であれば、ちょうど3万円を払う)、20%が約定支払い額以上を払います。完済などもそれに含まれます。約定通りに払う債務者のMPR説明寄与分は、通常1.5-2%しかありません。残りは、約定支払額以上、特に完済者の払いによって説明されます。確かに、3万円のうち、1.5万円相当が利息としても、MPR3%を説明するには、それ以外で、倍以上説明されなければなりません。たとえば、これを50万円や100万円返されたとしたら、1.5万円の10倍以上のインパクトがあります。

もうひとつ、金融ビジネスでは、債務総額区分を20万円刻みでわけて、0~600万円、それ以上の区分に分けて、利用者数、金額を正規分布から推定していますが、どの借入総額区分の債務者も、年間で、30%は完済者がいるという事実です。そうすると、残った債務者で貸金業者はやりくりしていきますが、その穴埋めが新規客で埋められるということになります。

さてこういう理由で、根雪化する債務者というのは、当初借入の1/3くらいの人たちといえます。
900万人であれば、300万人。小さくあありません。

以上の理由により、金融庁懇談会メンバーの池尾和人が主張される略奪的貸金ビジネスモデル仮説が成立することは、非現実なビジネスモデルに基づかれておりますことから、棄却されると結論できます。
まずは、経済事象を正しく認識するところから、はじめなければなりません。
M&Aにおいて、資産査定は、due diligence reviewは、相当の注意をもって調査をして始めて見えてきます。
そうした前提となる分析を欠いた立法であれば、うまくいく根拠がありません。中身を見ないで、買収ししたようなものでしょう。

ということで、直感的には、大竹モデルの仮説に組みします。ただし、セーフティネットや救済策を検討する上では、どのくらいの人数の債務者を対象にしているかの課題は残ります。本説明から、現実を調査なく、逸話的、あるいは吹聴的イメージに左右され、検証されないモデルを信じるとすれば、日興シティーのアナリスト津田氏が説明する「感情的」な場の空気(山本七平の説く、戦時下の空気)が、支配したのでしょうか。

投稿: yoshiyuki makoto | 2006年11月 1日 (水) 20時07分

 他の人のブログを借りて、議論するというのは気が引けます。それゆえ、最低限にしたいと思いますが、正直に言って主張されていることのポイントがどこにあるのか理解できません。
 生存分布に関する数字が単なる想定なのか、一定の統計的根拠をもったものなのか分かりません。もし単なる想定であるならば、想定次第でなんとでもいえるとしか言いようがありません。「まずは、経済事象を正しく認識するところから、はじめなければなりません。」というのは当然ですが、もし一定の統計的根拠があるとしたとき、主張されていることは、(今期は、過払い金の引き当てで赤字になっていますが)これまで大手4社が非常な高収益を現実に上げてきたという事実と整合的なのでしょうか。どうやってそんなに儲けられてこれたのかを、私の仮説が棄却できるという話と整合的に説明できるということでしたら、どうかご教示下さい。

投稿: 池尾 | 2006年11月 1日 (水) 21時44分

大竹先生のブログをお借りすることになり、その点については、気が引けます。
国民的な理解を深める大義名分で、お許しいただきたくお願いします。

説明がつたない点があり、誤解をされておりますが、こちらの落ち度です。
結論から申し上げれば、池尾仮説が棄却される理由は、分布函数から導かれるのではなく、現実の世界では、MPRもからも、わかるように金利だけを取るため出来るだけ元本を維持する仮説的商品は存在しないということです。元本回収の逃げ足は速いと思い込まれているより相当に早い。
MPRやトリガーレベルについては、金融庁の懇談会に格付アナリストを招いて、実際の取引のデータに関して(必要であれば、非公開の場で)説明を受ければ、説明が事実であることが証明されます。

問題は、残った20-30%の債権の一部には、池尾モデルに当てはまるような傾向のある口座が見受けられます。200-250万人もありうるということです。
債務者行動はスコアカードの影響を強く受けます。約定額を返済しないと、ATM利用が止められるので、皆さん、といっても75%以上が、約定支払額を越えて払う。10%弱が1日以上延滞、利息不足口座ですので、15%程度が、約定支払額不足で利息額以上の債務者となります。most recent six monthsで3回も約定不足を実績しますと、追加借入申請は却下になったりしますし、支払意思があっても〔支払っている事実から)、約定不足が頻繁に起これば、初期延滞のalertですから、カードがいったん停止になりかねません。そうすると、借入件数があっても、使えないので、返済オンリーで価値がなくなります。
そうすると、皆さん、決められた約定額は返そうとする。そして新橋烏森通りの5階で返した金を補うため、4階で、その穴埋めに3万円借りるかもしれませんが、そういうのが、200-250万人はいるということです。その数は、ちょうど借入5件以上にあたりますが、件数だけがパフォーマンスを決定する因子ではありません。
75%の債務者は健全に返していく。平均すれば、約定額全額でなく、70%になるかもしれませんが。

累積分布関数は、理解のため説明したにすぎません。確かにこんな傾向があるともいえる。分布の形状からガンマ関数だと想像できるかもしれません。それが誤解のもとですが、分布を推定することは非現実です。なぜなら、そういう満額のままで借入続けるひとがいないからです。利息しか払わなければ、100万円借りていれば、回収プレッシャーは大きくなるでしょう。初期延滞Alert監視口座ですし、リボを含めて与信は認められません、したがって、貸倒れを推定しようがありません。
債権の貸倒は、過去データから予測することは出来ましょう。信用因子としては、借入件数、返済総額、借入総額、所得、信用枠の利用可能額、loan age, 年齢+独身既婚、住居携帯(持ち家ローンなし、持ち家ローンあり、親同居、賃貸)、居住年数、地域、社保国保、職業、勤務年数(なぜか20年以上がGood),年齢(なぜか50代、特に60代がよい)などの組み合わせと、最近半年間のtransaction behavior(たとえば、7日延滞の有無)のbehavior 因子から、統計的に推計できます。
信用属性の組み合わせだけで、たとえば借入件数で10件、借入総額では連続値を使わず有意な水準で切った10区分、所得も同様に5-8区分、住居形態5区分など組合せば、3000通り程度をセグメント化して、それらをある時点で切ったときに、セグメント化されるローンプールの24~36ヶ月の経過月数別パフォーマンス(7、15、30,60,90日延滞の発生、貸し倒れ、弁護士介入、破産申立て)、返済率、MPR,追加借入率を測定し、セグメントわけの有意な組み合わせを確定します。
簡単にいえば、借入件数別にとることもできれば、2000年貸し出しプールも出来れば、借入総額/所得区分が、20~34%プールの2003年vintage poolも測定することができます。そういうデータを取られれば、何%がどういうセグメントで説明され、どういうパフォーマンスかすぐにわかります。
立法を目的とする以上、その程度をされるのが、注意義務の範囲と考えます。Basel II Capital Accordでは, consumer loan portfolioの資本計算上、validation testまでがもとめられていますので、dataminingは必須作業であり、なければ、業務することが不利な状況になります。

さて、信用枠いっぱい借りきって、それ以上借りれない状態にあり、利息しか払わない債務者segmentは別途考える必要がありますが、印象として相当に悪いでしょうが、そういう性格のセグメントのパフォーマンスを見てみる必要がある。分布は、そういう傾向のある口座セグメント作って、most likelyな想定をしましたが、現実がない以上、モデルにできるものはありません。貸し倒れ想定するのであれば、これらを決めて、セグメント化して(すくなくとも借入件数、所得の返済額比率)、推定する必要があります。6年以降の分布は難しいので、想像になる。それならその辺の式に放り込んだだけにすぎません。しかし生存率からみて、大きな影響はないでしょう。

貸金業者が、大もうけしているのは、そうした略奪方法によるものではありません。そういう部分があることは否定できませんが、寄与度は限られます。上記200-250万口座の一部、4-10件で、どこかの店では減っても、全体では借入が減らない口座を意味しています。そうした場合、どこかの残高が張り付くという減少は、限られるでしょう。大手業者のポートフォリオ・パフォーマンス・データを取れば、そうした口座でないことは、容易に証明されることです。誤解や人々が信じる逸話にもとづく思いつきで、証拠なく確定した事実あつかいされるべきことではありません。static pool performanceを2年分でもとれば、新規口座が入ってこない固定債権プールなので、状況を認識できるでしょう。

池尾モデルがどの程度当てはまるか。6件以上の一部でしょうか。50-80万人。でも小さくありませんが、常時存在する破綻予備軍です。

私は本業としてlogistic 回帰程度ながらscoring modelを作っており、data miningによる定義されたBad loansのodds の20もの説明変数としての信用属性の有効性 validation testをしております。金融庁懇談会で呼んでいただければ、説明させていただきます。ちなみにperformanceは、所得と借入総額の関数からだけで導かれるのではありません。それだけを統制して民間の与信方針に影響を与えようとすれば、全体に重大な悪影響が出るでしょう。

投稿: 吉行誠 | 2006年11月 2日 (木) 01時32分

 今回の私の主張点は、日本の消費者金融市場の現状においてはpredatory lendingが有意な問題として存在しており、それゆえ分析にあたってはそのことを正当に考慮すべきである、ということです。<<私のポイントは、現在の消費者金融業者のかなりの部分がプレディターだということを無視して議論をしないでほしいということです。>>と最初に書きました。したがって、「問題は、残った20-30%の債権の一部には、池尾モデルに当てはまるような傾向のある口座が見受けられます。200-250万人もありうるということです。」という指摘は、今回の私の主張をエンドースするものだと受け取ります。
 たとえ消費者側に近視眼バイアスや無知が存在していても、それを悪用(abuse)しないというのが貸し手責任(lender's liability)です。しかるに、わが国の現状では貸し手責任が放棄されてしまっている場合が多い。それゆえ、近視眼バイアスを正せという前に、貸し手責任の問題を問うべきである(しかし、大竹さんの議論ではそれが問われていないという点が、私の異論のポイントです)。

 なお、池尾仮説が棄却される理由は「現実の世界では、MPRもからも、わかるように金利だけを取るため出来るだけ元本を維持する仮説的商品は存在しない」ということですが、個々の商品設計としては元本を着実に返済していくようになっていても、借り増しを積極的に推奨するような営業姿勢と結びつけば、元本の減らない商品を売っているのと機能的には同等になりますから、全く根拠になっていません。「貸金業者が、大もうけしているのは、そうした略奪方法によるものではありません。そういう部分があることは否定できませんが、寄与度は限られます。」というのも、じゃあ、どうして儲けているのかについては何も説明されていません。顧客は収奪していないけれども、すごく儲かっているというのも、不思議な話です。あとは、私だけに言われても筋違いな主張があるだけです。
 
 けれども、「そういう部分があることは否定できません」ということだけで、今回の私の主張には十分です。本来的には、そういう部分があってはならないのですから。ということで、もう追加的にここで議論する必要はなくなったと思いますので、撤退します。よほどひどい誹謗中傷でも受けない限り、ここに追加的に書き込むことはしません。大竹さん、大変にご迷惑をおかけしました。悪しからず、ご寛恕下さい。

投稿: 池尾 | 2006年11月 2日 (木) 10時25分

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