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2007年2月25日 (日)

2月の「経済論壇から」

本日の日本経済新聞(2月25日)に「経済論壇から」が掲載されました。今月は格差と長時間労働について議論をまとめています。

ホワイトカラーの労働時間管理は、本当に難しい問題だと思います。ワーカホリックは、飲酒や喫煙といった依存症と比べて、被害が目に見えにくいですし、短期的には生産性も引き上げてしまうわけです。

ワーク・ライフバランスが取れていないと、社会的に生活することが難しい文化であれば、それが歯止めになります。たとえば休日や夜間の買い物ができない、ということであれば、残業ばかりしていては生活できません。ところが「亭主、元気で留守がいい」という言葉がある国では、家庭や社会がワーカホリックの歯止めになるのは難しそうです。

タバコ税や酒税は、価格メカニズムを通じて喫煙や飲酒の依存症を引き下げる効果があります。ワーカホリックの場合に価格メカニズムを使うとすれば、労働時間に対して累進的に企業に課税するか、労働時間に累進的に所得税をかけることですが、労働時間そのものを正しく計測できないので、この方法の実効性は限られます。代替的なものは、勤労所得に累進課税をかけることかもしれません。その意味で累進課税はワーカホリック対策になるかもしれません。ただし、ワーカホリック対策として、時間ではなく、所得を課税対象とすることを正当化するためには、高賃金の人ほどワーカホリックになりやすいということを証明する必要もあります。

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コメント

一見別物に見える正社員と非正社員の賃金格差と正社員の長時間労働が実は独立の問題ではない、とのご指摘は非常に興味深く思いました。それとワーカホリックは低賃金労働者に増えているとのことですから累進課税はその点ではワーカホリック対策にはならないですね?また、実際の職場では特段仕事をしている訳でも無い人が、ワーカホリックに便乗して時間外賃金をくすねていることもお見逃し無く。

投稿: fuji | 2007年2月26日 (月) 20時48分

「ワーカホリックは低賃金労働者に増えているとのことですから累進課税はその点ではワーカホリック対策にはならないですね?」
→「低賃金労働者に増えている」というより「高賃金層は当然として低賃金層にも増えている」ということです。高賃金層の方が低賃金層よりもワーカホリックになりやすいのであれば、累進所得税はワーカホリック対策として正当化できるかもしれない、というのが言いたかったことです。

 所得税は労働意欲を低下させますから、ワーカホリック対策としてはある程度有効です。問題は、ワーカホリックでなく働いている人とワーカホリックの人を区別できないことです。もともとホワイトカラーの労働時間という観察しにくいものに規制や税金をかけるのはかなり無理があるのです。

 所得税や消費税は、余暇に課税できないので歪みをもたらすというのが、標準的な最適課税の議論です。余暇に課税するためには、余暇と補完的なレジャー関連財の税率を上げることで対応せよ、というのが最適課税論の基本です。ワーカホリック対策はこの逆なので、余暇と補完的な財に補助金(軽減税率)を与え、労働と補完的な財の税率を高くするのが一つの方法です。商店の営業時間を規制すると、残業している人は買い物ができなくなるという形なら商店の営業時間という目に見えるもので、目に見えないホワイトカラーの労働時間を減らすことはできます。

 結局は、労働時間が長くなって所得が増える効果、ワーカホリックになって健康を害する効果、いつでのコンビニが使える便利さを享受できる効果等を私たちがどう判断するか、ということだと思います。

投稿: 大竹 | 2007年2月26日 (月) 21時38分

早速のご解説ありがとうございます。「もともとホワイトカラーの労働時間という観察しにくいものに規制や税金をかけるのはかなり無理がある」点は全くそう思います。
今回のエントリーは法と経済学とりわけ労働経済学のかかわりがますます重要になってきていることが実感できました。これからもブログで最新の話題を提供してください(ワーカホリックな先生にはそんな時間は無いかもしれませんが)。

投稿: fuji | 2007年2月26日 (月) 22時40分

こんばんは。

私はコンピュータエンジニアをしております。定性的な印象論で恐縮なのですが、この業界でワーカホリックになる人には、みな共通点がある気がしております。基本的にどなたも大変優秀で、今どんな仕事が必要かが的確にわかり、かつそれを実現することができ、ミスなどを人のせいにしない、人当たりの柔らかい人ばかりなのです。そうした方々が不当にワーカホリックにされていっているという印象を抱いております。「できる」人だって基本的に人なので、自ずと限界ということがあるのですが、それが考慮されずに仕事の負荷が特に納期直前などにそうした少数の方に集中するのです。昇進などで多くを望まなければほとんど仕事らしい仕事をしなくても月々数十万円もらえてしまうという人たちが多数いるので、そうした人たちの収入の安定を、彼らがワーカホリックになって支えている、そういう印象をもっています。なんともやりきれず、「優秀」になどそう簡単になるものではないな、とすら思います。

投稿: bun | 2007年2月28日 (水) 01時04分

bunさん、コメントありがとうございます。ご指摘の現象はどこの職場でもあるでしょうね。解決のためには、結局、健康管理は上司の責任だというシステムを設計する必要があると思います。長時間労働で短期的に業績が上げたとしても、従業員の健康状況を悪化させた場合には、その管理者の評価を低くするという仕組みを作るのも一つだと思います。

投稿: 大竹 | 2007年2月28日 (水) 11時57分

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