« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »

2008年6月

2008年6月28日 (土)

女女格差

『女女格差』は、橘木先生の新著。

インパクトの強いタイトルの付け方、ピンクを主体とした本の装丁(しおりもピンク)、と注目を浴びる条件をうまく満たしている。中身も、女性同士の様々な経済的、社会的な格差の実態を、女性にとって重要な人生の意思決定について、分かりやすくデータを元に議論している。著者の思い切った意見が入っているのも橘木先生の本らしい点だ。一般の人はもとより、大学の学部生でもデータをもとに著者の解釈や意見と自分の考えを対比させながら読むのに適している。

著者によれば、「女女格差」という言葉は、ザ・アール社長の奥谷禮子氏が作ったと『結婚帝国 女の岐れ道』(上野千鶴子・信田さよ子著)の52ページに指摘されているそうだ。

私は、『ジェンダー経済格差』の著者の川口章さんから、2000年に玄田有史が『日本労働研究雑誌』(2000年2・3月号)の学会展望座談会で、「「女女間賃金格差」の研究が重要だ」、という発言をしていることを教えてもらった。玄田さんは、研究者としてだけでなく、コピーライターとしての才能をもっている。でも「女女間格差」よりも「女女格差」の方が強烈なインパクトがあるのは確かだ。いずれにしても、うまいネーミングだ。

「女女格差」が大きな注目を集めるのは、女性の社会進出が進んで、キャリアとして活躍する女性が増えていることを背景にしている。逆に、男性の方は、正社員が主流だったのが、非正規雇用で働く人が増えてきたという意味での「男男格差」が発生している。男女平等が進むとともに「男女格差」に代わって「女女格差」「男男格差」という格差が目立ってくる。経済的な環境は変化しても、人々の意識がなかなか変わらないところに、様々な摩擦を引き起こす原因があるのだと思う。

【目次】
第1章 男女格差
第2章 女性の階層
第3章 教育格差
第4章 結婚と離婚
第5章 子どもをもつか、もたないか
第6章 専業主婦と勤労女性
第7章 総合職か一般職か、そして昇進は
第8章 正規労働か、非正規労働か
第9章 美人と不美人
第10章 おわりに

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月26日 (木)

コーポレートガバナンスの改善が格差対策

ハーバード大学のIan Dew-Becker氏とノースウエスタン大学のRobert J. Gordon教授が、アメリカの格差対策についてVox blog に興味深い論説を書いている。上位10%の所得が上昇した理由は、スーパースター現象、SBTC(技能偏向的技術進歩、要するに高学歴者をより必要とする技術革新)、社長の報酬の上昇という3つ。最初の二つは、市場メカニズムだから、対応策は税による所得再分配を強化することが対策である。しかし、最後の社長の報酬の上昇については、必ずしも市場メカニズムで引き起こされているわけではないので、情報公開とコーポレートガバナンスの改善が有効で、平等をもらたし企業価値も高めるという意味で一石二鳥ということ。

日本では、社長の給料が上がるというよりも、企業の内部留保が増えているのが特徴だ。この点についての対策は、ゴードン教授らの提言と同じで、企業の情報公開とM&Aの活発化を含めたコーポレートガバナンスの改善であろう。それが、労働者や株主への分配を高めることになる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年6月25日 (水)

グローバルCOE

先週、グローバルCOEの審査結果が発表され、私が拠点リーダーとして申請していたプロジェクトが無事採択されました。これからが大変ですが、しっかり成果を出せるように努力していきたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

飢饉の長期的影響

先週、ソウルで開かれた第19回 NBER EASE Meeting に参加して論文を報告してきました。私が報告したのは、人口高齢化が義務教育への公的支出に与える影響に関する論文です。この論文では、少子化は一人あたり教育費を引き上げる一方で、高齢者比率の上昇が一人当たり教育費を引き上げること、現在は全者の影響が大きいが近い将来その効果が逆転し、高齢化により生徒一人あたり教育費が低下する可能性が高いことを実証的に示しました。

報告された論文の中で興味深かったのは、Douglas Almond, Lena Edlund, Hongbin Li, Junsen Zhangの4氏による "Long-Term Effects of Early-Life Development: Evidence from the 1959-1961 China Famine,"という論文です。中国の飢饉の年に生まれた子供たちのその後の社会経済状況を分析したものです。飢饉の年に生まれた子供は、その前後の年に生まれた子供よりも、社会経済状況が悪いこと、その年に生まれた子供が産んだ子供の男女比は女性の方が高いこと、が非常に説得的に示されています。胎児における栄養状態が、長期的な影響をもつことを示す重要な研究だと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「格差と希望」本日発売

Kakusatokibo0031 『格差と希望: 誰が損をしているか?』が本日発売されます。

格差と希望 誰が損をしているか?』 大竹文雄
筑摩書房 (ISBN:978-4-480-86383-6)
発売日 2008年06月25日 価格  1,890円(税込)

年金問題、ロストジェネレーション、企業不祥事など、この国の重大事を取り上げ、処方箋を示す。不公平な仕組みを放置させないための、明快な時代診断の書。

目次
はしがき
第1章    資本の論理を問う
       「若者二極化」の弊害―意欲を再生する政策を    
        Column1  新規学卒偏重のデメリット
       「資本の論理」を問う―法制度の整備が急務
          Column2  解雇規制強化の皮肉な結果
        社会に広がる「不安感」―経済学的な思考法必要
          Column3  現在・将来の意思決定と脳科学
        改革阻む既得権の壁―弊害が多い「一律カット」
          Column4  もはや、「低所得者=貧困者」ではない
        戦後システムに変化の兆し―主体的判断が重要に
          Column5 軽い負担、重い負担館
       「二分法」の落とし穴―改革目的、再確認を
         Column6  市場競争とセーフティネット
第2章  リスクと不安
       M&Aの背後に景気回復―ビジョン明確化、奏功
        Column7 プロ野球機構を株式化せよ
       少子化社会の虚実を問う―大国幻想との決別を
           Column8 年金未納は若者の逆襲
       予見困難な改革リスク―専門家の育成が焦点に
          Column9  「災害保険税」を創設せよ
       偏った情報化が不安増幅―冷静な対応を
          Column10  ウィキノミクスで経済政策
      「格差社会」をめぐり論争―市場原理の賢い利用を
          Column11  想定問答・格差社会
       若年層の格差問題をめぐって―打開の道は教育改革に
          Column12  「待ち組」は反省すべき?
第3章  社会の中のグレーゾーン
       「格差」批判と既得権の維持―論争の吟味が課題
          Column13  格差解消に既得権者ができること
       政府の大きさを考える―国家像の議論が必要
          Column14   矛盾
       社会の中のグレーゾーン
          Column15   上限金利問題を考える
       「回復感」乏しい景気回復―今から将来の準備を
          Column16   悪玉論は心地よい
       「小さな政府」と満足度―支出の中身が重要に
          Column17   教育の充実こそ、格差対策の本流
       「働く貧困層」という問題の本質―教育訓練が急務に
          Column18   男女差別解消の思わぬ結果
第4章  格差社会の行方
       「美しい国」を支える経済学―家計も知識武装を
          Column19   経済学は役に立つか
       「平時」こそセーフティネットの構築を―相次ぐ改革の提起
          Column20   地域格差をどう考えるか
       問題と対峙、脱パターンで―感情を排し、本質に迫る
          Column21   人事も経理も中国へ
       少子化時代の「教育改革」―世代間の連帯が重要に
          Column22   脳科学と経済学が教える格差対策
       「雇用の質」と格差問題―冷静な議論が必要に
          Column23   長時間労働を解決するには
       格差に影落とす「国際化」―地道な対策の実行を
          Column24   成長・格差論争の共通の罠
       格差論議―日米に隔たり
       米で深まる最低賃金論争
あとがき

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2008年6月11日 (水)

日本学士院賞授賞式

6月9日(月)に、上野の日本学士院で日本学士院賞の授賞式がありました(NHKニュース)。授賞式には天皇皇后両陛下が出席されました。授賞式の前に、各受賞者がポスターなどを使って研究内容を天皇皇后両陛下に一人5分でご説明と質疑応答をさせて頂く時間がありました。私が所得格差について説明させて頂いたところ、両陛下から若者の格差の問題やその対策についてご質問を受けました。授賞式の後、受賞者と学士院新会員は、皇居でお茶会に招かれました。夜には、文部大臣主催の晩餐会がありました。明治44年(1911年)以来、毎年、学士院賞が続いてきたということに、改めて感銘を受けました。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年6月 6日 (金)

やっぱり離婚も金銭的インセンティブに反応する

厚生労働省の『人口動態統計』の2007年版によれば、年金分割制度がはじまった2007年には、35年以上の同居期間の夫婦の離婚件数が前年よりも16%増えた。その前の年(2005年から2006年にかけて)は、わずかながら減少していた。結婚や離婚の意思決定には、金銭的インセンティブが大きかったということだろう。もう少し時間がたってデータポイントが増えれば、制度改正の影響を受けたグループと受けなかったグループを用いて、差の差による検定ができるようになるはずだ。ただし、このデータだけだと、同居期間別夫婦数の変化も反映している。正確には、同居期間別離婚確率で議論するべきだ。

Dokyokikan_rikon

 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

タクシー接待

 財務省、国土交通省、金融庁、農水省などの国家公務員が、深夜にタクシーに乗った際に、ビールや清涼飲料水、おつまみ等を受け取っていたことが、「タクシー接待」として問題にされている。確かに、褒められた話ではない。でも、この話と、接待による利益供与の話は、似ているようで少し違うのではないだろうか。接待や賄賂を受け取って、競争入札にせずに、随意契約で高い価格で発注すると、公費を無駄にすることになり、国民に迷惑を与える。

 では、タクシー接待の場合は、国民はどのような損害を被っているのだろう。もし、国家公務員が、タクシー接待を受けることを目的に、深夜まで残業していたのなら、残業代とタクシー代の両方で、国民は被害を受けたことになる。

 しかし、深夜まで残業することが、避けられない状況であれば、税金で賄われるタクシー代そのものは、国家公務員がタクシー接待を受けても受けなくても変わらない。運転手間の競争が、タクシー料金の値下げ競争にならず、ビールや清涼飲料水の提供という形で行われたのである。つまり、規制によってタクシー料金が値下げできないから、タクシーの運転手が実質的な値下げ競争を行ったのだ。タクシー料金がその分値下げされていたなら、国民負担は減ったはずだ。根本的な問題は、タクシーの料金規制にある。

 昔、銀行の預金金利が規制されていたころ、預金すると銀行は様々な景品をくれたものだ。価格規制が歪んだサービス競争をもたらしているのであれば、そこを正すことを考えるべきではないか。「タクシー接待」を禁止したところで、私たち国民が得をするのだろうか。

 問題の本質は、深夜まで働いてタクシーで帰らなければならない国家公務員の仕事環境そのものであり、タクシー業界の価格規制ではないだろうか。もちろん、深夜まで働く必要がないのにタクシーで帰るために残っているというのであれば、問題とされていい。批判の論点を明確にしないと、不毛な議論になる。

(追記) 遠距離割引の仕組みは地域によって異なる。大阪のタクシーは、5000円を超えると5割引き、東京のタクシーは9000円を超えると1割引きとなっている。もし、東京のタクシーが大阪並みの長距離割引をしていたならこういう問題は生じなかったのではないか。

| | コメント (7) | トラックバック (5)

2008年6月 5日 (木)

橘木先生VS爆笑問題

6月3日の「爆笑問題のニッポンの教養」に橘木俊詔先生が出演されたそうです(私は見逃してしまいました)。テーマは、「愛と幻想の価値論」。たぶん、単独では、経済学者初出演でしょう。慶応の先生が複数出ていらしたときに、清家篤先生が出演されていたように記憶しています。6月9日(月)午後3:15~総合テレビ6月10日(火)午前8:30~BS2で再放送の予定ということです。録画しなければ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年6月 3日 (火)

クオリティ・エデュケーション

国際教育学会(会長 西村和雄教授)から『クオリティ・エデュケーション』という雑誌が創刊されました。
創刊号の目次です。学会員になれば、論文をダウンロードできます(年額3,500円)。
この号には、私も寄稿させて頂きました。

Vol.1 March, 2008 
特集:再チャレンジ可能な社会の条件-社会と教育の格差構造-

                     
■学歴社会の再構築と人材の流動化
                        -再チャレンジ可能な知識社会への見取り図-
                        大森不二雄

■ゆとり教育政策による格差拡大効果と企業による雇用可能性
                          浦坂純子, 西村和雄, 平田純一, 八木匡

■項目反応理論による英語能力推移に関する研究の比較
                        熊谷龍一

■高齢化・所得格差・教育問題
                        大竹文雄

■学校における職業教育の経済効果
                        玄田有史, 佐藤香, 永井暁子

■選別主義と格差
                        太田肇

■教員評価制度によって「現場は混乱している」のか?
                        -教育改革の社会学・試論:教育改革から教育政策へ-
                        諸田裕子

■格差を拡げる入試制度はどのように始まったのか?
                        -日本におけるオープンアドミション・システムの淵源-
                        木村拓也

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年6月 2日 (月)

自信過剰論文のポスター

東北大学で日本経済学会春季大会が開催されました。「自信過剰が男性を競争させる」という論文をポスターセッションで、大学院生の水谷徳子さんが報告しました(水谷徳子・奥平寛子・木成勇介・大竹文雄の共著)。ご来場いただき、説明を聞いてくださった方々、ありがとうございました。その時のポスター(「tohoku08poster.pdf」をダウンロード)です。

水谷さん

Tohoku_mizutani_3

共著者全員

Tohoku_all_3

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「格差と希望」が出版されます

日経に書いた「経済論壇から」と東洋経済の「経済を見る眼」に書いたエッセイに、書き下ろしを加えた本を今月出版することになりました。

格差と希望 誰が損をしているか?』 大竹文雄
筑摩書房 (ISBN:978-4-480-86383-6)
発売予定日 2008年06月25日 予定価格  1,890円(税込)

年金問題、ロストジェネレーション、企業不祥事など、この国の重大事を取り上げ、処方箋を示す。不公平な仕組みを放置させないための、明快な時代診断の書。

目次

第1章 資本の論理を問う

第2章 リスクと不安

第3章 社会の中のグレーゾーン

第4章 格差社会の行方

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »