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2008年9月

2008年9月24日 (水)

平等ゲーム

日本の不平等」という本の著者にとって、桂望実さんの「平等ゲーム」という小説は必読と思って読んでみた。東西冷戦の時代には、たぶん誰もが真剣に、所得が完全に平等な社会と市場競争の社会の優劣を考えていたのだと思う。実際、それが現代的な経済学が発展した理由の一つでもある。全員平等の「鷹の島」という架空の島を舞台にした小説で、それが議論される、というのは、社会主義国がほとんど崩壊した現在を象徴しているように思う。若い人は、この本をどのように読むのか聞いてみたい気がする。学部生の経済学の副読本として、面白いかもしれない。

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日本の成果配分をめぐって

ESPという雑誌の2008年9月号に「日本の成果配分をめぐって」という論説を書きました。この号は、「植田レポート」の特集です。

巻 頭 言     「構造変化と日本経済」専門調査会報告
グローバル経済に生きる-日本経済の「若返り」を-の公表に当たって     大田弘子

特集     構造変化と日本経済       
座 談 会     グローバル経済に生きる

        植田和男、樋口美雄、増島 稔
インタビュー

    日本経済の「若返り」を:     牛尾治朗

特集論文

   日本経済の進路         福井俊彦

    金融における構造変化        氏家純一

    日本の成果配分をめぐって     大竹文雄

    わが国のコーポレートガバナンスのあり方     冨山和彦

    世界経済のパラダイム転換と日本     小島 明

    いわゆる21世紀版前川レポートを読んで日本経済を考える     水野和夫

報告書     経済財政諮問会議「構造変化と日本経済」専門調査会 報告

       グローバル経済に生きる-日本経済の「若返り」を-    

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人口減少と日本経済

9月26日 日本学術会議で「人口減少と日本経済」というシンポジウムが開催されます。 私はそこで、話をする予定です。

Ⅰ.セッション1:人口減少の背景と将来展望(10:00~12:00)
 1)「人口減少の背景と要因」津谷典子(慶應義塾大学教授、日本学術会議会員)
 2)「人口変動の将来展望」金子隆一(国立社会保障・人口問題研究所人口動向部長)
 3) 討論:阿藤 誠(早稲田大学教授、日本学術会議連携会員)
 4) 討論:猪木武徳(国際日本文化研究センター教授、日本学術会議会員)

Ⅱ. セッション2:社会保障制度の仮題と展望(13:00~15:00)
 1)「年金制度の課題と展望」高山憲之(一橋大学教授、日本学術会議連携会員)
 2)「医療・介護保険制度の課題と展望」岩本康志(東京大学教授、日本学術会議連携会員)、福井唯嗣(京都産業大学教授)
 3) 討論:翁 百合(日本総合研究所理事、日本学術会議会員)
 4) 討論:土居丈朗(慶應義塾大学准教授、日本学術会議連携会員)

Ⅲ. セッション3:労働市場とマクロ経済への影響(15:15~17:15)
 1)「技術革新と労働の質への影響」二神孝一(大阪大学教授、日本学術会議連携会員)
 2)「家計とマクロ経済への影響」大竹文雄(大阪大学教授、日本学術会議連携会員)
 3) 討論:樋口美雄(慶應義塾大学教授、日本学術会議会員)
 4) 討論:廣松 毅(東京大学教授、日本学術会議特任連携会員)

総括と展望:岩井克人(東京大学教授、日本学術会議会員、経済学委員会委員長)

                                                           
2008/9/26(金)
9:45~17:35
人口減少と日本経済-労働・年金・医療制度のゆくえ-日本学術会議講堂東京都港区六本木7-22-34

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2008年9月20日 (土)

市場競争のメリット

9月14日と15日に近畿大学で、日本経済学会の秋季大会がありました。その中で、興味深かったのは、「独禁法と競争政策の進化と設計:法と経済学のインターフェイス」というパネル討論でした。司会が東京大学の柳川範之氏で、最初に早稲田大学の鈴村興太郎氏、一橋大学の岡田羊祐氏、東京大学の大橋弘氏が日本の独禁法と競争政策の特徴や問題点について話をして、公正取引委員会の後藤晃氏と東京大学の松井彰彦氏がコメントし、その後議論をするというものでした。

印象に残ったのは、独占禁止法に関する政策の当事者たちの多くが法学者で、経済学者が少ないという指摘が複数あったことです。そして、そのような場では、市場競争のメリットを「完全競争はパレート最適をもたらすという厚生経済学の基本定理」に求めても、何の説得力ももたないという鈴村氏の指摘は、経済学者にとっては深刻な問題だと思いました。

市場競争のメリットを理解してもらえないのでは、市場競争の活性化をもたらす政策である独占禁止法どころか、規制緩和政策そのものの意味も、経済学者以外に理解してもらうことは不可能です。鈴村氏は、競争のプロセスがもたらす価値を重視すべきではないか、という提案をされていました。これに対し、松井氏は市場競争のメリットとしてインセンティブをもたらすことを強調してはどうか、という提案をされていました。

日本以外の国では、「格差が拡大したとしても市場競争によるメリットの方が大きい」という意見に賛成の人が圧倒的に多いのに、日本ではこの意見に同意する人が際立って少ないという国際的な世論調査の結果があります(詳しくは、拙著『格差と希望』、または、Inequality in Japan)。

岡田氏が、「独禁法は、「消費者の利益のために存在」し「競争者の保護ではなく、競争の保護」というのが、日本以外の国での標準なのに、日本ではそうなっていないのではないか」、という問題提起をされていました。消費者保護の仕事は、本来は公正取引委員会の仕事のはずなのに、消費者庁という別の組織が作られようとしていることが、日本の独占禁止政策の歪みを反映しているのではないか、という岡田氏の指摘には、私も全く同感でした。

これは、かなり根深い問題だと思います。日本の中学や高校の公民や政治経済の教科書を読んでも、市場競争のメリットはほとんど書かれていないのに、独占の問題や市場の失敗ばかりが強調されています。これでは、独占がなぜ悪いか、という本当のところが、人々に理解されないはずです。独占が問題なのは、競争が排除されて効率性が阻害されることであって、弱い競争者がかわいそうだというのではありません。多くの問題はあっても競争によって得るメリットは大きい、という共通の認識を私たちがもつ必要が高いと思います。

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生活習慣病の原因は出生前・子供の頃にある

 出生時の体重が生まれてからの健康や社会経済状態に大きな影響を与えるという研究をこのブログでも紹介してきた。(飢饉の長期的影響「小さく産んで・・・」は本当か?)。

 日本においても医学的研究結果が出されていることが、8月に発表された日本学術会議の提言でわかる。「提言  出生前・子どものときからの生活習慣病対策」(平成20年8月28日 日本学術会議 臨床医学委員会・健康・生活科学委員会合同 生活習慣病対策分科会)。

 大人になって生活習慣病に苦しんでいる人は、生まれた時の体重や出生直後の体重変化がどうっだったかを確認してみると、その理由がわかるかもしれない。

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