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2008年12月25日 (木)

高木連合会長の「覚悟の提言」

 連合会長の高木氏が、『正論』(2009年2月号)に現在の経済危機への対応策として画期的な提言をしている(高木剛(日本労働組合総連連合会会長)「今こそ小泉構造改革の”迷夢”を断ち切れ」、『正論』平成21年2月号)。一読の価値がある重要な提言なので、その内容を紹介してみよう。

「世界が、そしてわが国が、かつてないほどの危機に直面している。この危機を乗り切るには、イデオロギーや党派・立場の枠を越えて労働者も協力しなければならない。私が今回、初めて月刊誌に寄稿したのも、正論読者に連合の方針を知ってもらい、連帯の輪を広げたいがためである。もちろん、わが国政府の問題点を指摘するにあたり、労働組合自身の問題点を棚上げするつもりはない。後述するが、非正規雇用労働者の増大など昨今の社会的問題を起こした主犯が経営であるならば、労働組合は従犯だと思っている。」という出だしで始まる。

 次に、市場原理主義による負の資産として、「かつて多数を占めていた中間層が二極化し、今や格差拡大どころか貧困問題が重要な課題となっている。こうした実情が出生率の低下や少子化にも拍車をかけ、保育サービスの質・量的不足、産科・小児科の医師不足など子育て支援・出産に係る課題も山積している。」と指摘する。そのあと、小泉政権における派遣業における規制緩和が、格差拡大を招いたという指摘もしている。

 そして、「株主主権主義からステークホルダー主義への転換をはかり、効率と競争最優先の価値観から公正と連帯を重んじる日本をめざして大きく舵を切るべきである」として、5つの基軸を提唱する。5つの基軸とは、「連帯」、「公正」、「規律」、「育成」、「包容」だ。

 続いて、労働組合の責任についてもう一度言及する。

「バブル経済の崩壊以降、グローバリゼーションの到来、株主至上主義など企業経営を取り巻く環境は激変し、企業は生き残りをかけた競争環境に置かれることになった。労働組合は組合員の雇用を守るため、企業のリストラ策に一定の追随を余儀なくされた。個別企業内で見れば競争に生き残るための苦渋の選択であったが、日本全体で見れば非正規雇用労働者の増大や若者の失業、フリーターなどの不安定雇用といった社会的問題を引き起こしてしまった。労働組合は内向きになっており、窓を開けて外を見ることができなかった。職場に急増する非正規労働者が視野に入っていなかった。私がこうした企業の不当性の高い雇用契約に関して「経営が主犯であるとするならば、労働組合は従犯」と指摘している意味はここにある。反省なくして前進はない。」

 最後の次の文章も力強い。

「繰り返す。これからの日本には、安定した雇用システムや安心できる社会保障の仕組みの再構築、内需主導型の経済システム、経済・財政運営への転換が不可欠だ。もう一度厚い中間層を取り戻し、安全と安心、そして信頼の日本、希望の国日本を実現するためパラダイムの転換に向け、大きく舵を切らなければならない。」

 連合の会長自身が、今までの労働組合の在り方について率直に反省している点は、正に「覚悟の提言」だと思う。現状認識はかなり私と近い。ただし、微妙に異なる認識のところもある。私自身は今までの日本経済が、高木氏が主張するほど株主主権主義だったとは思っていない。高木氏が指摘するように、企業と労働組合は主犯、従犯という共犯者であった点からいえば、正社員による従業員主権だったからこそ、労働市場の二極化が進んだのではないだろうか。

 何れにしても、労働組合の最高責任者である連合会長が、労働組合にも労働市場の二極化の責任があることを、これだけはっきり認めたことは大きな意味をもつ。事実認識の共有が進むことは、もの事を改善する上での重要な一歩だ。

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コメント

こんばんは
とてもいいことをおっしゃっていると思います。
でも私も大竹先生のおっしゃることのほうにより賛成です。
そして、それを踏まえるなら、労働組合は果たして従犯だったのでしょうか?ひょっとすると限りなく主犯に近いのではないかと思います。
現段階では「覚悟の」かどうかはわからないかと思います。引退した人でも評論家でもなく現役会長です。労働者のトップです。覚悟は言葉だけでなく形で示す必要があると思います。
守られてきた人たちからどれほどのものを吐き出させることができるのか。私も強いて言えば守られてきた側に近いかもしれませんけれども、みんなが同じような考えかどうかはともかく少なくとも私は「じゃあお前吐き出せよ」と言われても「仕方なければ吐き出すが、俺だけというのはいやだ」と答えます(笑)

投稿: るんぱマン | 2008年12月26日 (金) 19時38分

コメントありがとうございました。企業や政府を批判するだけだった連合で、会長がこのような発言をするのは相当の覚悟だったと思います。そいう意味で、論理に矛盾が残るのは、仕方ない面もあるのでしょう。おっしゃる通り、そうすることが社会的にいいと思っていても、個々人がそういう行動をとるかどうかは別の話です。環境問題とよく似ています。失業の痛みを、当事者以外の人も感じる仕組みを作らないと、失業を防ぐための仕組みも作れません。「覚悟」の提言をされた高木会長には、是非リーダーシップを発揮してもらいたいと思います。

投稿: 大竹 | 2008年12月26日 (金) 21時29分

初めて書き込みいたします。30歳男です。
今月の正論を購入して読んでみたいと思います。

こちらに引用されている高木会長の発言を読みまして確かに大変勇気のある提言をされていると思いますし、この提言の内容が政党の政策に反映され実行されていくことが
これからの日本には不可欠であるとも思います。

しかしながら弾き出された世代からすると正直違和感も感じてしまいます。
今更何を言うのかと。労組は従犯ではなく、少なくとも共犯だろう、と。
この最後に残った意地というか言い訳が高木会長の前進の妨げにならないといいのですが・・・

今回の金融危機により累進課税の強化、所得に応じた社会保険料率の設定など多くを保有する人間が多くを負担するという視点が社会に取り戻されることを望みます。
また私達の世代もあと50年どうやって食べていくか、を世代として再考しなければならない状況であると思います。

投稿: hal | 2008年12月27日 (土) 00時33分

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