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2009年2月 2日 (月)

だまされないための年金・医療・介護入門

学習院大学准教授の鈴木亘氏の「だまされないための年金・医療・介護入門」という本は、社会保障がもたらしている世代間不公平の実態を明らかにしてくれる。

鈴木氏の研究によれば、年金・医療・介護という社会保障全体の世代間の不公平は非常に大きい。厚生年金と健保組合に加入してきた1940年生まれの世代は、この3つの社会保障によって4850万円の得をしている。これは、彼らが生涯受け取る給付の総額から生涯に支払う保険料の総額を差し引いた金額が4850万円にも上るという意味だ。では、2005年に生まれた子供たちは生涯でどの程度社会保障制度で得をするだろうか。答えは3490万円の損である。つまり、この二つの世代の差は、8340万円にもなるのである。どの世代で、この関係が逆転しているかと言えば、1960年代前半生まれの世代である。つまり、私の世代だ。私よりも若い世代は、日本の社会保障制度で「損」をする。

社会保障は世代間の助け合い、という言葉があるが、日本の制度は助け合いになっていない。一方的な負担だからだ。もらう方が、若い世代を十分に助けるのであれば、助け合いになるかもしれないが、現実の日本の制度は、若い世代から1960年以前生まれの世代への所得移転にすぎないのだ。これから高い経済成長が続けば、若い世代の負担はたいしたことがないかもしれない。しかし、過去20年間の日本経済の状況をみた上で、将来の日本の高い経済成長を確信できる人はどの程度いるのだろう。そんな不確実な話で若い世代は納得してくれるだろうか。社会保障による世代間の負担格差は、社会保障制度の大幅な改革がない限り、確定していることなのだ。2005年に生まれた子供たちは約3500万円の借金を最初から背負っているのである。

人口構成の変動が大きい時代に、年金・医療保険がどうあるべきか、という基本的な理解を身につけるために、本書をぜひ読んでほしい。

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コメント

また良い本のご紹介をありがとうございます。
読書予定リストに加えさせて頂きます。

投稿: 重道 潔 | 2009年2月 3日 (火) 00時14分

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 株の初心者の入門 | 2011年11月 5日 (土) 16時04分

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