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2009年6月

2009年6月30日 (火)

補正予算

6月22日の読売新聞に、今月の論説でよかったものを3つあげた。『経済セミナー』7月号の玄田・湯浅対談、『SHIGHT』の神門さんのインタビューで「農業と自民党」、そして、『世界』7月号の杉谷、神田両氏の「亡国の『補正バブル』予算案」だ。神門さんの「偽装農家」という表現は、「なるほど」、と思った。
 需要不足を補うための財政政策は必要だったと思うが、もう少し使い方に工夫があってもよかったと実感している。補正予算ということで、通常の予算と「違う」使い方をしたり、特別のプロジェクトを作る必要に迫られている人たちが多いのではないだろうか。そんなことをするくらいなら、当初予算で減額査定された部分をもとにもどしたり、次点になった使い道を復活させた方が、よっぽど無駄なく有効にお金が使えるように思う。それに、手間もかからない。

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子どもの教育成果の決定要因

子どもの教育成果の決定要因『日本労働研究雑誌』、No.588、2009年7月、pp.67-84(小原美紀・大竹文雄)が掲載されました。

「子どもの教育成果の決定要因」

小原 美紀(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)
大竹 文雄(大阪大学社会経済研究所教授)

本論文では、子どもの教育成果の決定要因について、最近の経済学的研究を展望する。子どもに対する直接的・間接的な教育投資が子どもの教育成果に与える影響については、多くの研究が行われてきた。本論文では、親の所得や家庭環境が教育成果に与えるルートを(1)子どもの出生後の財と時間の両面による教育投資を通じた影響、(2)子どもの出生時における状況が与える影響、(3)子どもの出生前(胎児期)および出生時、出生後に関する健康投資を通じた影響に分けて整理する。

経済学的な実証分析により、純粋な家庭環境の変化が教育成果に与える効果(因果関係)を計測すると、親の所得や母子(父子)家庭などの家族構成と子どもの教育成果との間の関係について確定的な結果は得られない。母親の労働と子供の教育成果の関係についても確定的な研究成果はない。子どもの健康状態、とくに出生時の体重が重いほどその後の教育成果に正の影響を与えるという研究については、その影響の大きさについてばらつきはあるものの、方向性についてはかなり一致が見られている。

本研究の後半では、都道府県別のデータを用い、労働市場の状況、子どもの教育成果と出生時の体重との関係を調べる。限られたデータではあるが、失業率が高い時期に生まれた子どもの出生時体重が軽いこと、出生時体重とその後の学力の間に正の相関があることが示される。地域別の学力が注目されることが多いが、出生前の親の家庭環境や幼児期の家庭環境の影響を分析することが必要かもしれない。教育格差を縮小させるための政策的対応を考える上でも、日本の実証研究の蓄積が急務である。

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2009年6月26日 (金)

派遣労働者の生活と求職行動に関するアンケート調査

経済産業研究所(RIETI)で、鶴光太郎(RIETI)、久米功一(経済産業省)、奥平寛子(岡山大学)の各氏と行った派遣労働者に関する実態調査の報告書「派遣労働者の生活と求職行動に関するアンケート調査」(pdf)がまとまった。概要は、ここにまとめられているとおりだ。賃金や労働時間といった、就業状況に関する調査項目に加えて、幸福度、時間割引率、危険回避度といった指標も調査してみた。日雇い派遣や製造業派遣に関する規制改革を考えるためには、まず実態の把握が大事だ。日雇い派遣、製造業派遣、パート・アルバイトといった非正規の間でもずいぶん大きな違いが観察されている。

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2009年6月12日 (金)

行動経済学と不況対策-スミスとケインズの処方箋

「行動経済学と不況対策-スミスとケインズの処方箋」というテーマで、大阪大学社会経済研究所がシンポジウムを開催します。 申込は、こちらから。

テーマ:「行動経済学と不況対策-スミスとケインズの処方箋」

パネリスト: 堂目 卓生 (大阪大学大学院経済学研究科・教授)
       小野 善康 (大阪大学社会経済研究所・教授)

司 会:      大竹 文雄 (大阪大学社会経済研究所・教授)

日 時: 2009年8月26日(水)  18:00~20:00
場 所: 大阪大学中之島センター10階 佐治敬三メモリアルホール

概要: 世界的な不況の中、市場主義に対する懐疑的な考え方が広まっています。本当に財政出動と規制強化が正しい不況対策なのでしょうか。不況対策として、行動経済学は何を教えてくれるでしょうか。市場主義の創始者だと見なされることが多かったスミスは、単純な合理的人間を想定していたのではなく、現実の人間行動に関する深い洞察のもとで、市場経済を考えていました。また、ケインズは貨幣や利子、賃金に対する現実の人々の行動をもとに経済学を構築したのです。このシンポジウムでは、行動経済学者としてのスミスを描写した堂目卓生氏、現代的な経済学でケインズを蘇らせた小野善康氏による講演と不況対策に関する両氏によるディスカッションを行います。

主催: 大阪大学社会経済研究所
共催: 大阪大学グローバルCOE「人間行動と社会経済のダイナミクス」
     行動経済学会
後援: 財団法人 関西社会経済研究所

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2009年6月11日 (木)

日本経済学会 ポスターセッション

6月6日と7日に日本経済学会春季大会が京都大学で開催されました。よい報告が多く、とても有益な大会でした。なかでも印象的だったのは、藤田昌久先生の会長講演とポスターセッションです。

ポスターセッションは、日本経済学会では昨年の春季大会から取り入れられたばかりですが、定着してきましたし、どんどん良くなっていると思います。今回も会場は盛況で、ポスターも力作が多かったと思います。ポスターセッションのメリットや注意事項が、学会からもこのように広報されていますが、まだ改善が必要なポスターもありました。これに加えて、私自身が感じたことを書いてみたいと思います。

第一に、魅力的なポスターを作成するということ自体が大きな経験として様々なことに役に立ちます。ポスターは数分間で研究の内容をおおまかに理解してもらえるものでなければなりませんし、多くの参加者に見てもらえるような魅力がなければなりません。こうしたプレゼンテーション能力は、研究者として、絶対に身につけておくべきものです。たとえば、学術振興会へのポスドクの申請書にしても科研費の申請書にしても、ポスター作成のノウハウと同じことが要求されます。山のような申請書類を次々と審査員は読んでいくのですから、審査員が読みたくなるような申請書であり、さっと読んで内容を理解できるように書かれていないと、まともに読んでもらません。非常に狭い分野の専門家しかわからないようなポスターであれば、誰も読もうとしませんし、話を聞こうとしません。「面白そうだ」と思わせる工夫が必要です。

第二に、ポスターセッションで一人の参加への説明に長時間かけすぎるのは望ましくありません。いくらポスターセッションであっても、参加者は一枚のポスターに5分かけたとしても1時間で12枚しか見ることができません。15分も説明していると、一時間で対応できる人の数は限られてきますから、潜在的にいいコメントをもらえたはずの人と話をするチャンスを逃すことになります。説明は短くすることです。短い説明で済むようにポスターを工夫しておけばいいのです。特に、専門家はポスターがよくできていればいるほど、ポイントとなる点だけを聞きたいと思うものです。

私は学士院賞の授賞式で生まれて初めてポスターセッションを経験しました。ご説明した相手は天皇皇后両陛下でしたが、説明は3分、質疑応答2分でした。最初はとても短いと感じましたが、よく考えると当然です。聞く方からすれば、一人5分でも全ての受賞者の話を聞き終わるのに、1時間はかかるのです。私も他の受賞者の話を聞きましたが、一流の研究者だけあって、魅力的なポスターで専門外の人にもよく分かるように話をされていました。若い頃からポスターセッションを経験しておけば、私ももっと上手に対応できたと思います。その意味では、今から準備ができる若手研究者は幸せかもしれません。

写真はポスターセッションで報告する私の研究室の大学院生の窪田さんです。Kubota_poster_web

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2009年6月 3日 (水)

中公新書の森-2000点のヴィリジアン

中公新書の発行点数が2000点を超えたのを記念して、中央公論新社が「中公新書の森-2000点のヴィリジアン」という無料の小冊子を刊行した。

この中に、中公新書の中のお薦め本のアンケートがあって、私も3冊の本を推薦させていただいた。その際、高校生や大学生のころに読んだ思い出深い本にするか、自分の専門分野での推薦にするか、ずいぶん悩んで、結局後者にした。アンケートの結果をみると、前者のパターンで答えた人の方が多かったように思う。

私の推薦は、梶井厚志著『戦略的思考の技術』、小野善康著『不況のメカニズム』、堂目卓生著『アダム・スミス』の3冊。私の推薦文が梶井さんの本の帯に使われているようだ。

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2009年6月 1日 (月)

祝日の増加を実感しない理由

本日発売の「週刊 東洋経済」(6月6日号)の「経済を見る眼」というコーナーに、
「祝日の増加を実感しない理由」というエッセイを書きました。

祝日数が増えたのに、それを実感しない理由を、考えてみました。平日の労働時間が増えているという東京大学の黒田祥子さんの研究と、日本の有給休暇取得時期の決定方法の特殊性に関する東京大学の水町勇一郎さんの研究を紹介しています。

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