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2009年8月 4日 (火)

最低賃金制度の余剰分析

労働市場が完全競争のときであっても、最低賃金を市場賃金以上に引き上げによる失業増加が少なく、最低賃金の上昇が大きければ、賃金の期待値が上がるので、労働者にとって望ましい、と考えている人もいるようだ。少しくらい失業が出ても、雇われたときの賃金が上がれば得ではないか、ということだろう。

 合理的な労働者を前提とした場合、この考え方には、三つの問題がある。第一に、最低賃金が引き上げられた場合に、そこで雇われる人は、低い賃金でもいいから最も働きたいと思っている人(消費者余剰の大きい人)から雇われるわけではなく、どの程度働きたいという気持ちが強いかとは無関係にランダムに雇われる。そうすると、賃金上昇による消費者余剰の増加は、その分小さくなる。

 第二に、仮に、労働者としての消費者余剰が最低賃金上昇によって増加しても、生産者余剰は確実に減少し、その効果が上回るので社会的な総余剰は確実に減少する。

 第三に、最低賃金が引き上げられなければ、全員が雇われていた場合でも、引き上げによって、運よく職を得られる人とそうでない人の間に格差が発生する。その意味でも、格差解消策どころか、格差拡大策になる。最低賃金引き上げによって、職についている人の間の賃金格差は縮小するが、職につけない人が増えるのだ。

 八田先生の「ミクロ経済学 II」の56ページから60ページに以上のことが丁寧に書いてある。

 私のこのエントリーは、最低賃金上昇で雇用が失われることを正当化するための一つの説明方法として、行動経済学的バイアスがある、ということを説明したものだ。

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7/31の最低賃金に関するエントリを大竹文雄氏にTBしたが、本日、それへの応答とも読める大竹氏のエントリがあった。 7/31エントリで小生は、最低賃金引き上げ率がそれによる失業率上昇を上回るならば、最低賃金労働者にとってメリットになるのではないか、と書いた。こうし... [続きを読む]

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