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2009年11月12日 (木)

事業仕分けをみて思ったこと

行政刷新会議の事業仕分けが始まった。
様子をネットやテレビで見ると、どこかのテレビ番組みたいで、面白いことは間違いない。「悪役」の官僚が説明をして、正義の味方が批判をして、多数決で判決が即座に言い渡される。今まで、大きな利権のために、誰もが無駄だと思っていても、なかなか削減できなかった事業があぶりだされるという効果もあるに違いない。ただ、テレビ番組のようによくできたショーを見ていて、心配になったこともある。

第一に、数多い事業のなかから対象事業がどうやって絞り込まれたかが不透明なことである。第二に、個別事業だけを判断することはより包括的な事業の効率性を歪める可能性があることだ。

それを感じたのは、大学関係の対象事業をみたからだ。以下にあげたものが大学関係で事業仕分けの対象にされている。

▽国立大学法人運営費交付金
▽大学教育・学生支援推進事業
▽グローバルCOEプログラム
▽グローバル30
▽組織的な大学院教育改革推進プログラム
▽戦略的大学支援プログラム
▽大学等奨学金
▽科学技術振興調整費(革新的技術推進費、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成)
▽同(若手研究者養成システム改革)
▽科学研究費補助金(若手研究S~B、特別研究員奨励費)
▽特別研究員事業
▽女性研究者支援(科学技術振興調整費「女性研究者支援システム改革」)
▽世界トップレベル研究拠点プログラム

ここに挙げられているものは全て、期限付きの競争的資金か独立行政法人への運営費交付金である。つまり、本来の事業が必要かどうか、という判断で対象が集められたというよりも、「来年から募集をやめます」、とか「来年から運営費交付金をx%カットします」と言えば、それで実行が可能なものが集められているように思えるのである。

期限付きの競争的資金が増えてきたのは、組織に自動的にお金を配分するよりも、研究を活性化したり、若手研究者の自立性を高めたりすることが目的である。私学助成の在り方も含めて、大学での教育・研究の仕組みの変更だったはずである。本来、そうした制度変更の効果があったのか否かをできる限りきちんと評価して、その制度変更の効果を検討すべきものだ。新しい制度を始めるのはいいけれど、それを評価する仕組みができていないため、削減しやすい個別事業を取り上げて、効果がないと判断していくことにならないだろうか。

成果主義の導入で失敗した企業は、本当は賃金カットをしたかっただけなのに、まともな評価もしないで成果が足りないといって賃金をカットしたところが多かったのではないだろうか。非正規雇用が雇用調整の対象になったり若年雇用が悪化したのは、既存正社員の働きぶりをきちんと評価していなかったり、働きぶりに応じた賃金や雇用調整ができていなかったことが原因ではないだろうか。

もし、有効でない事業ではなく「止めやすい事業」がストップされやすいということであれば、役所のインセンティブは、つぎのようになるはずだ。今後の新規の事業はできるだけ、いつ止められても問題ないものばかりにする。本当は無駄だけれども止めるのが面倒な既存の事業に比べて、もっと意味のないものを常に新規事業として用意する。

なんだか日本の非正規雇用が増えてきたこととそっくりだ。非正規が増えすぎて、企業の力が弱くなってしまったことと同じようなことが、国にも起こらなければよいのだが。中身をきちんと評価して、本当に無駄なものをなくしていってほしい。

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コメント

財務省主導で取り仕切られている今の事業仕分けで、「中身をきちんと評価して、本当に無駄なものをなくして」いくなんて画に描いた餅ですよ。
連中は、初めから「削減(廃止)ありき」なんですから。

投稿: 恵比寿 | 2009年11月12日 (木) 22時25分

やらないよりは一度はやってみた方がいい。
やらないと分らない事もあるし駄目な点があれば「改善」すればいいしね。
事業の見直し検討において、まず「止められないか」のスタンスから入るのは基本中の基本。
議論に時間をかけるほど成果が出にくくなるという事もまた真理。
裏を返せば本当に必要なモノなら短時間の説明、検討議論でも十分にその必要性を理解させられるハズ。
結論を出せずに「次回へ持ち越し再議論」などというのは避けなくてはいけない最悪のパターン。
密室で物事を決めず会場での一般人の傍聴に加えたりインターネット上での中継されたりと公開の場で行われたという事は大きい。

投稿: 県人 | 2009年11月13日 (金) 12時38分

私の感想は、「事業仕分け」のメリットは十分認めた上で、気をつけないといけないところを書いたものです。
「事業仕分け」をきっかけに、政策評価に関する実証研究の重要性が広く認識されて、この分野の経済学研究が活性化されることを期待しています。そのためには、政府統計データの公開も進めてほしいと思っています。あまりお金もかからないです。データの公開→政策評価研究→事業仕分け、というプロセスの確立が急務だと思っています。

投稿: 大竹 | 2009年11月13日 (金) 12時51分

初めから削減ありきの評価作業は信用していません。仕事には目的(政策)が必ずあるわけですが、仕事を止める事自体そのものは経費削減には繋がりますが、一番大事な政策までが消えてしまう・・・。削減ありきだといずれ手詰まり感が出てくるはず。
この「事業仕分け」は、政策評価とはかけ離れてるものだと理解しました。

投稿: 加藤 | 2009年11月13日 (金) 13時23分

研究費を削るのであれば、研究費の一部を大学・学部に上納させる会計検査院の通達も廃止されるべきではないのですか。

投稿: 嘉三郎 | 2009年11月13日 (金) 15時15分

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