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2009年11月 9日 (月)

どうして日本の貧困率は高いのですか?

先日、中学生に経済の話をしました。その中で、日本の相対的貧困率が高いという話をしたところ、授業の後「どうして日本の貧困率が高いのか?」という質問を多くの生徒から受けました。

そこで、彼らに回答してみました。

 日本で高いのは、相対的貧困率です。相対的貧困率は、所得の順位が50%の人の所得の半分以下の人の人数比です。日本では、比較的低位から中位の人の所得が高いので、50%目の人の所得(中位所得と呼びます)は、高めに出ます。

 極端なケースを考えてみましょう。世帯人員は全員一人だとします。A国では、下から5%の人の所得がゼロ、5%から55%までの人の所得が100万円、55%から100%までの所得が1000万円だったとします。このとき、中位所得は100万円ですから貧困率は所得50万円以下の人の割合なので、A国の相対的貧困率は、5%になります。

 B国では、下から5%の人の所得はゼロ、5%から20%の人は30万円、20%から40%の人は50万円、40%から60%の人は200万円、60%以上の人は1000万円だったとします。このとき、中位所得は、200万円になりますから、その半分の100万円以下の人の比率は、40%となります。

 本当に貧しい人の比率は、おそらくA国の方が高いはずですが、貧困率という指標だとB国の方が高くなってしまいます。真ん中の人が豊かな国ほど、この指標だと貧しい人が多くなります。変な指標かもしれませんが、人々が何をもって貧困だと感じるかということにかかわってくるのです。もし、真ん中の所得の人の半分の所得がないと、とてもストレスを感じて貧しいと思う人が多ければ、この指標は意味があります。逆に、半分以上の人がとても貧しい社会なら、少々貧しくても、自分は貧困だと感じないかもしれません。

 日本で貧困だとされる人の所得は、世界でみると高い方です。絶対的な意味で貧しいのではありません。病院に行けない人や食事が取れない人や服を買えない人の比率が高いわけではありません。でも、貧しいと感じる人が多ければ、様々な社会問題が起こってくる原因になるはずです。

 もうひとつの問題は、統計による違いです。実は、日本の貧困率は、それを計算するために使った統計によって異なります。厚生労働省が発表した数字は、『国民生活基礎調査』という厚生労働省が調査している統計です。これ以外にも総務省が調べている『全国消費実態調査』という統計もあります。『全国消費実態調査』だと貧困率は、8%程度で、『国民生活基礎調査』の数字の半分ほどです。では、どちらが正しいのでしょうか。おそらく、実際はその中間にあると私は思っています。なぜなら、どちらの統計にもクセがあるからです。

 『国民生活基礎調査』は、福祉事務所が調べていますから、福祉を受給している世帯の調査の比率は高くなると予想できます。結果的に、低所得者の比率が実際より高めに出るのではないでしょうか。一方、『全国消費実態調査』は、別の調査担当部局が調べます。本当は、国民は国の統計に答える義務があるのですが、忙しい人の中には断る人も出てきます。そういう人には、低所得者と高所得者に多いといわれています。つまり、低所得者比率は少なめに出てくると考えられます。

 なぜ、最近になって貧困率が高くなってきたかのでしょうか。これには、いくつかの理由があります。

 第一は、不況の影響です。不況のために経済全体の所得が低下していますが、低所得の人が失業すると貧困につながる可能性が高いのです。

 第二は、技術革新です。コンピューターの発達で、コンピューターの得意な計算、決まり切った仕事はどんどん人からコンピューターに変わってきました。今は駅の改札はすべて自動改札ですが、昔は駅員の人が切符を確認していました。電子メールが普及したことによって郵便の量は減ったはずです。そうすると、今日本に残っているのは、コンピューターにできない仕事か、コンピューターにさせるととてもお金がかかる仕事です。それには、二つのタイプがあります。一つは、掃除や配達といった機械化をするとお金がかかるけれど、だれでも人ならできる仕事です。こうした仕事は、賃金が安くなります。もうひとつは、アイデアを考えたり、データから判断したりする仕事で、高度な能力がいるので、その仕事ができる人が少ないタイプの仕事です。つまり、賃金の高い仕事と低い仕事に、二極化してきているのです。

 第三の原因は、グローバル化です。貿易が進んできて、労働力が安い外国から製品が輸入されるようになったことです。日本の人たちは、中国で安く生産できるのであれば、日本でその製品を作る必要はありません。みなさんが着ている服のほとんど中国でつくられています。それは、中国の人の方が安い賃金で働いているからです。同じ製品を日本で作ろうとしても賃金が高すぎるのです。世界との競争にさらされる製品を作っている場合は、その賃金は日本国内だけではなく、外国の賃金水準の影響を受けるのです。このため、低賃金が増えてきているのです。

 第四に、高齢化も影響しています。高齢者は引退して所得が減ってしまった人たちが多いので、高齢者が増えてくると、所得で定義した貧困率は上昇します。ただし、高齢者の所得が低いからといって本当に貧しいとは限りません。というのは、引退した高齢者の中には、仕事をしていた時に貯金をしたり住宅を買ったりして、豊かな人も多いからです。

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コメント

国民生活基礎調査の所得分布を就業構造基本調査と比較してみたところ、保健事務所経由だから貧しい層に偏っているという批判は、それほどあたっていないように見受けられます。むしろ年収の低い層(生活保護を受給していない層)は就業構造基本調査の方が救えているように見受けられます。
単身世帯
http://vi-no.at.webry.info/200911/article_2.html
二人以上世帯
http://vi-no.at.webry.info/200911/article_4.html
にグラフを掲示しています。

投稿: | 2009年11月26日 (木) 22時24分

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