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2010年2月

2010年2月27日 (土)

人間に格はない

少し前、品格という言葉がタイトルについた本がベストセラーになった。玄田有史さんの新著は、そういう言葉を嫌った石川経夫先生の言葉をタイトルにしたものだ。「人間に格はない―石川経夫と2000年代の労働市場」は、副題に石川先生の名前があるが、あくまでも玄田さんの2000年代の研究をもとにまとめられた研究書だ。石川先生の名前がタイトルにあるのは、彼の師であった故石川経夫教授と心のなかで対話をしながら彼が研究を進めてきたことを反映している。研究書ではあるが、玄田さんの文章はとても読みやすいので一般の人にも読めるだろう。その上、各章には一般向けのコラムも配置されている。

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行動経済学

「行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書)」は、京都大学の依田高典教授の新著だ。行動経済学の入門書は、つぎつぎといいものが出版されているが、この本もお薦めできる。特徴は、二つある。第一は、経済学説史の中に行動経済学を位置づけて説明していく点である。第二は、依田さんの専門であるタバコやギャンブルといった依存症的行動に関するご自分の研究に基づいた分析が紹介されていることである。京都大学での講義にも使われてきたということで、とてもわかりやすい。その上、専門的なことを知りたいという人にも知的好奇心を満たすような工夫が随所になされている。この本には、参考文献は掲載されていないが、興味をもった人は、彼も著者の一人である「行動健康経済学―人はなぜ判断を誤るのか」を読まれると、詳しい説明と参考文献リストがある。

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2010年2月17日 (水)

年金の大誤解

週刊 ダイヤモンド 2010年 2/20号 」は、公的年金に関する諸問題をうまくまとめている。公的年金の何が問題なのか、理解したい人は必読。

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2010年2月12日 (金)

その科学が成功を決める

心理学の研究に基づいた一般向けの本を書いてきたリチャード・ワイズマン博士の新著が翻訳された。『その科学が成功を決める』は、心理学の研究成果に基づいて、様々な自己啓発本で言われていることが科学的根拠をもっているのかを検証している。文献もきちんと引用されている。面白いのは、そうした検証の結果から、この本それ自身が優れた自己啓発本になっているところだ。もっとも、科学論文に基づいているものだけに限定しているので、万能ではないし、限定的なこともきちんと書いている。実際に役に立つことも多い。こんなことも研究してみたい、というヒントにもなる。たぶん、勝間さんならこれをもとに、また新しい自己啓発本を書くことができると思う。

目次
実験1 「自己啓発」はあなたを不幸にする―「自己啓発」を実践している人は、何もしない人より幸福度が低いという衝撃のデータ

実験2 「面接マニュアル」は役立たずだった!―「ヘマをしたほうが好感度がアップする」という米デューク大学の大規模調査

実験3 イメージトレーニングは逆効果―ペンシルヴェニア大学研究室発「プラス思考が人生を暗くする!」

実験4 まちがいだらけの創造力向上ノウハウ―オランダでの研究成果「暗示をかけるだけで人は創造的になれる」

実験5 婚活サイトに騙されるな―ノースウエスタン大学発「大勢にモテようとする女は敬遠される」

実験6 ストレス解消法のウソ―アイオワ州立大の研究では「カラオケは逆効果」

実験7 離婚の危機に瀕しているあなたに―「夫婦間の話し合いは効果なし」ワシントン大学調査が下した冷徹な事実

実験8 決断力の罠―「集団で行う意思決定はリスクが高い」というMITの実験結果

実験9 「ほめる教育」の落とし穴―コロンビア大学発「ほめられて育った子供は失敗を極度に恐れるようになる」

実験10 心理テストの虚と実―アテにならないこれだけの科学的根拠

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2010年2月 7日 (日)

脳文化人

脳プロのシンポジウムで、「脳文化人」とか「芸脳人」という言葉があるのを知った。脳文化人は、脳科学の中身を一般に知らせるという役割をもつ一方で、間違ったことを伝えていることも多く、科学者たちが困っているということだ。「ラクガキ帳」というブログで紹介されているやりとりは、神経科学を経済学と置き換えてもなりたつ。つまり、私たち経済学者も同じ悩みを抱えているのだ。

どうして、こうなるのだろうか。実はこの問題は、「ランズバーグ先生の型破りな知恵」という本の最初に議論されている話と本質的には似ている(ただし、本で議論されている話の内容はここでは説明しない)。コミュニケーション能力が高い人がメディアで科学的な成果の最先端をわかりやすく話し、最先端の研究者が彼らに協力するというある種の分業がなりたっていれば、問題は起こらない。しかし、メディアの要請に応じて、脳文化人が科学的成果を歪曲して伝えたり、根拠がないことを話しだすと、脳文化人と神経科学者との間の分業はうまく成り立たなくなる。メディアに出る人は、怪しい脳文化人だけになり、脳文化人が怪しいことを言うから彼らと一緒にされたくないと思う「まとも」な神経科学者は、ますますメディアに出なくなる。悪い均衡だ。

この悪い均衡から脱出するためには、「まとも」な神経科学者にメディアに出てもらったり、一般向けの解説書を書いてもらうことが必要だ。でも、そのインセンティブがないからこそ、「まとも」な神経科学者はメディアにでない。悪循環を解決するためには、「まとも」な神経科学者に研究成果を一般向けに説明させることを義務付けるか、そうした活動を評価するしかない。これは、一人ひとりの研究者にとっては、コスト以外のなにものでもないが、そのコストを払わない限り、社会における脳科学の正しい理解といういわば公共財の供給がなされない。そうしないと結局は、脳科学が社会から信頼されなくなってしまい、研究費の獲得もできなくなってしまう可能性がある。一流の脳科学者である藤田一郎先生が「脳ブームの迷信 (家族で読める family book series) (家族で読めるfamily book series―たちまちわかる最新時事解説)」という本を書かれたり、坂井克之先生が「脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか 」(河出ブックス)を書かれたのは、そういう危機感であり、彼らが支払ったコストなのだと思う。脳科学が、狭い意味の生物学や医学だけだった時代なら問題にならなかったことが、その発展のおかげで、脳科学が総合的人間科学になってきたことが、経済学と似た問題が脳科学でも発生してきた原因のように思う。でも、その問題への対応は脳科学の方が経済学よりもずっと早いような気がする。

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2010年2月 4日 (木)

未来思考

 『学力低下は錯覚である』および『不透明な時代を見抜く「統計思考力」 』で社会問題の統計から解釈し、わかりやすく伝えてきた神永正博さんが、統計で日本の未来を考えた『未来思考 10年先を読む「統計力」』を出版された。子供を産むこと、住むこと、働くことを統計と経済学、社会学、地震学などを駆使して、日本の10年後を描く。わかりやすく、統計数字で事実を見せることで、説得的に世の中の問題の本質を説明してくれる。

 少子化問題の背景に何があるのか、どんな解決策がいいのか。産めよ増やせよは、解決策なのか。グローバル化や技術革新から目を背けていても何の解決にもならないことを、著者の暖かい心が感じられる筆致で書かれている。背後には経済学的な思考があるけれど、神永さんの書き方だと、経済学へのアレルギーも生じないのではないだろうか。政治家や役人の方にも読んで頂いて、政策運営に生かして頂きたい。

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2010年2月 2日 (火)

ランズバーグ先生の型破りな知恵

「ランチタイムの経済学」や「フェアプレーの経済学」といった一般向けに経済学の考え方を説明する名手であるランズバーグ先生の新著が翻訳された。『ランズバーグ先生の型破りな知恵』というタイトルは、もとのタイトルとはずいぶん違うが、原著に忠実なタイトルだと購入層が偏るか、本屋で手に取りにくかっただろう。

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新老年学 第3版

『新老年学 第3版』が東京大学出版会から刊行された。生物学、医学、社会学、経済学、建築学など多くの分野の専門家が、老年と関わるテーマについて執筆している。私は、小原美紀さんと共著で、「Ⅲ 社会老年学」の「第2章 高齢期における可能性と限界」の「貧困・消費」という項目を執筆した。価格が税込み4万2千円というのは、すごいけれど、この分野に関心のある人は手元にあると便利だと思う。東大出版会による紹介はここ。 

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