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2010年6月19日 (土)

頭のでき-決めるのは遺伝か、環境か

ミシガン大学の心理学者であるリチャード・E・ニスベット教授による『頭のでき』(ダイヤモンド社)は、IQの決定要因に関する優れた啓蒙書だ。タイトルが柔らかすぎるので、トンデモ本のように思われてしまうかもしれない。全く逆だ。この本の中身は、様々な学術研究を一般の人にもわかるように展望してくれるのだ。たとえば、IQが遺伝によって決定される比率は、一般に思われているよりもはるかに小さいことが示される。幼少期を含んだ家庭環境の影響が極めて大きいことが、ヘックマンの研究も含めて紹介される。バウチャーの効果、クラスサイズの効果、効果的な学校の効果がどの程度あるのかについても、様々な研究が紹介される。回帰分析やセレクションバイアスの問題についても付録で丁寧に解説されているので、実証研究をはじめたい学部生にも参考になるはずだ。教育関係者はもちろん、子供をもつ親なら読んでおくべき一冊だと思う。この本で強調されていることは、きちんとした介入実験がほとんどなされないまま、様々な教育改革がなされてきたことだ。証拠もないまま、全員平等に教育改革の対象にされてしまうことの被害者は、その対象となる子供たち自身だ。文部科学省の担当者や中央教育員議会の委員は、ここに書かれている内容を理解した上で、政策を決めていってほしい。

目次
第1章 知能の種類は一つではない
第2章 遺伝子はどれほど重要なのか
第3章 学校は人を賢くする
第4章 学校をさらによくするための方法
第5章 貧富の差は知能に大きな影響を及ぼす
第6章 黒人と白人のIQ
第7章 知能の差は縮められるのか
第8章 アジア人のほうが賢いか
第9章 ユダヤ人の教育の秘密
第10章 あなたの子供、そしてあなた自身の知能を高める
エピローグ 知能と学力についてわかっていること

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