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2011年12月

2011年12月29日 (木)

2011年のベストセラー

本ブログでの2011年のベストセラーです。
年末の刊行にもかかわらず、仲野先生の本がランクイン。

1 人口負荷社会(日経プレミアシリーズ)
2 さよならニッポン農業(生活人新書321)
2 競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書)
4 図解 よくわかる行動経済学―「不合理行動」とのつきあい方
5 コンピュータが仕事を奪う
5 自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾
7 経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)
8 こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)
8 なかのとおるの生命科学者の伝記を読む
8 新しい経済の教科書 (日経BPムック)
8 競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)


惜しくもランク外はつぎの本

ゲーム理論の思考法
An Introduction to Behavioral Economics
ダニエル・カーネマン心理と経済を語る
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
人事評価の総合科学―努力と能力と行動の評価
実況・料理生物学 (阪大リーブル030)
金融危機とマクロ経済: 資産市場の変動と金融政策・規制

ご利用ありがとうございました。

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2011年12月25日 (日)

「なかのとおるの生命科学者の伝記を読む」を読む

 著者の仲野徹先生は大阪大学医学部の教授で、「いろんな細胞はどうやってできてくるのだろうか」ということを研究している方だ。NatureやScienceをはじめ、一流学術雑誌に多くの論文を掲載している生命科学のトップクラスの研究者である。仲野先生は、ご専門以外の本の読書量も豊富な上、お笑いにも詳しい。twitterでの発言もユーモアあふれるものだ(@handainakano)。
 その仲野先生が、18人の世界の生命科学者の伝記を読んで、ユーモアあふれる文体で内容を紹介して下さったのが、本書「なかのとおるの生命科学者の伝記を読む」である。生命科学の第一線の研究者が書いてくれているので、わかりやすい上に臨場感あふれる。その上、科学者とはこうあるべき、ありたいという仲野先生ご自身の意見や解説が随所にふんだんに盛り込まれている。違う分野の研究者である私も、身が引き締まる思いで、仲野先生の研究に対する態度を読ませていただいた。
 全体を読んで、生命科学者にはなんと個性的な人が多いのだろう、と思うと同時に、彼らがこういう発見をしたのは比較的最近のことだということに改めて驚いた。
 もう一つ感じたのは、こういった科学者の物語を、もっと多くの人が読むべきではないか、ということだ。というのは、多くの人の科学に対する考え方が、科学の当事者とずいぶん異なっているように思うからだ。
 多くの日本人は、科学的ということをずいぶん誤解しているのではないだろうか。ある物質が人間にどの程度有害なのかについて、科学者が異なる意見を述べることがある。それを聞いた人の中には、科学者が特定の立場に立って意見を言っているので、科学者が真実をわざと伝えていないのではないか、と思う人がいる。確かに、そういう信頼がおけない”科学者”がいるのは残念ながら事実だ。しかし、多くの場合、科学の最前線ではわかっていないことが多いのが実状で、一つのことについて様々な意見があるのがごく普通のことだ。もちろん、科学的な知見が蓄積されて、多くの科学者が同じ意見をもつことがどんどん増えているのも事実だ。しかし、新たな事実が学会の共有財産になれば、また新たな謎が出てきて、その謎について、いくつもの仮説が提唱され、その仮説を検証していく。それが科学者の最前線の研究の状況だ。
 そういうことは、大学や大学院で理系の研究に携わった人なら誰でも当然のこととして感じている。ところが、高校までの理科の教科書には、科学はすべて確定したこととして記載されているため、どんなことでも計算や実験さえすれば、科学者は明確な答えを出せると、思わせてしまう傾向がある。このデータからは、この程度の確率で、ある仮説が棄却できないとか、このデータからだと、この仮説とこの仮説のどちらが正しいかは判断できない、といったことを考えることを高校の段階では教えてもらえない。
 既に、学会の共有財産になったことを学んでいく上では、そういう共有財産ができあがっていく段階でも試行錯誤を辿っていく必要はないし、そういうことをするのは時間の無駄かもしれない。しかし、科学がたどり着いた結果だけを学ぶことの弊害の一つは、科学に対する間違った期待を人々がもってしまうことだろう。それが、科学者は本来わかっているのに、人々に嘘をついているという不信をもたらしてしまうのではないだろうか。もう一つの弊害は、科学は既にわかっていることばかりで、もう新たに研究することはないのではないか、と若者に思わせてしまうことだ。
 こうした間違った科学への考え方を直すには、科学が生まれてきた様子を人物ベースで知ることが有効だ。そのためには、科学者の伝記を読むことはとても効果的だ。この本は、生命科学の解説付きで、ダイジェスト版の伝記集だ。科学者が試行錯誤を繰り返したり、偶然得られた結果をうまく利用したりする様子を知ることで、今では常識になっている科学的な知識も、ほんの少し前に、科学的な知識として獲得されてきたものであることが実感できる。特に、最近の発展が著しい生命科学の分野は、その傾向が強い。この本を読んで、多くの人が生命科学のみならず、科学への認識を変えてもらうきっかけにしてほしい。
 紹介されている伝記の中には、絶版になっているものが多いのは残念だ。電子書籍の形でも復刻してもらえたらうれしい。

目次(学研メディカル秀潤社のホームページより)

【はじめに】

【第一章 波瀾万丈に生きる】
野口英世:一個の男子か不徳義漢か
クレイグ・ベンター:闘うに足る理由
アルバート・セント=ジェルジ:あとは人生をもてあます異星人
ルドルフ・ウィルヒョウ:超人・巨人・全人

【第二章 多才に生きる】
ジョン・ハンター:マッド・サイエンティスト × 外科医
トーマス・ヤング:Polymath ー 多才の人
森 林太郎(鷗外):石見ノ人 鷗外と脚気論争
シーモア・ベンザー:「オッカムの城」の建設者

【第三章 ストイックに生きる】
アレキシス・カレル:「奇跡」の天才医学者
オズワルド・エイブリー:大器晩成 ザ・プロフェッサー
サルバドール・ルリア:あまりにまっとうな科学者の鑑
ロザリンド・フランクリン:「伝説」の女性科学者
吉田富三:鏡頭の思想家

【第四章 あるがままに生きる】
リタ・レーヴィ=モンタルチーニ:ライフ・イズ・ビューティフル
マックス・デルブリュック:ゲームの達人 科学版
フランソワ・ジャコブとジャン・ドーセ:フレンチ・サイエンティスツ
北里柴三郎:終始一貫 (研究編)
北里柴三郎:終始一貫 (スキャンダル編)

【番外編 知的文化遺産】

【おわりに】
 ー今日も伝記を読んでいるー

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2011年12月22日 (木)

阪大リーディング大学院

 大阪大学は、博士課程リーディングプログラム(リーディング大学院)という文部科学省の制度に、応募していましたが、オールラウンド型で「超域イノベーション博士課程プログラム」、複合領域型で「生体統御ネットワーク医学教育プログラム」の2つが採択されました。
 オールラウンド型で採択されたプログラムの概要は、このリンク先にあるとおりです。メンバーの中に私も入っています。もう少しだけ詳しいプログラムの概要(pdf)です。2012年4月から阪大の博士前期課程に入学予定の方は、このプログラムに応募資格があります。関心をもたれた方は、今後関連情報に注意して頂ければ幸いです。

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大相撲の力士の人差し指と薬指の比率と昇進・成績

 大相撲の力士の人差し指と薬指の長さの比率(2D:4D比)と昇進・成績の関係を分析した私たちの論文が、Evolution and Human Behavior という学術雑誌のオンライン版で掲載されました。

Rie Tamiya, Lee SunYoun and Fumio Ohtake "Second-to-fourth digit ratio and the sporting success of sumo wrestlers," Evolution and Human Behavior, Available online 6 October 2011

2D:4D比は胎児期のテストステロン曝露量と相関していると言われています。スポーツの能力の中には、2D:4D比と相関しているものがあることが今までの研究で明らかにされてきました。私たちは、大相撲の力士の手形を使って、力士の2D:4D比と昇進・成績の関係を統計的に分析しました。その結果、人差し指に比べて、薬指が相対的に長い力士ほど、最高位の階級が高いですし、幕内生涯勝率も高いという統計的な関係があることが分かりました。ただし、2D:4D比で説明できる部分はそれほど大きくありません。平均すれば、そういう傾向があるという意味です。この傾向は、身長、体重、指の長さ等の情報をコントロールしても変わりません。
 力士のデータを使うことのメリットは、主につぎの二つです。第一に、引退した力士だけのデータを使って分析できることです。力士の生涯での最高位や勝率のデータを使えます。現役の力士だけだと、これから昇進していく可能性のある力士とそうでないかを区別することができません。力士の場合は、指の長さの情報が相撲博物館が集めている手形を使えば得られるのが、他のスポーツにない特徴です。第二に、大相撲は明確な順位が定められていますから個人の成績をはっきり捉えることができます。

 一般向けの紹介がScientopiaというサイトで紹介されました。
Look Carefully at your hands…were you meant to be a Sumo Champion??

 また、このサイトに掲載された内容がGizmodoというサイトで紹介されました。

日本語版: 強いお相撲さんの手を科学する

英語版: A Sumo’s Fingers May Matter More Than His Weight

 なお、2D:4D比に関する研究については、京都大学の平石界さんが「指と科学とお相撲と(1)」で丁寧に紹介されていますので、それをお読み頂けるといいと思います。(2)で、私たちの論文についても紹介して頂けるそうです。

平石界 「指と科学とお相撲と(1)

平石界「指と科学とお相撲と(2)
 

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