レヴィット教授が、Freakonomicsのブログで、興味深い論文を紹介している。アメリカの所得格差拡大は実質的にはそれほど大きくなかった、と主張しているシカゴ大学のChristian Broda教授とJohn Romalis教授の論文である。
実質所得を計測する際、普通は消費者物価指数を使う。つまり、平均的な消費者が購入する商品の構成と量を固定しておいて、その商品を違う年に購入するといくらかかるようになるか、というのが消費者物価指数だ。
しかし、購入する商品の構成は、人によって異なるので、本来なら、個人ごとに物価指数というのは、異なってくるはずだ。
そこで、所得階層別に商品の購入パターンが異なることを前提に、所得階級別消費者物価指数を作ってみて、その消費者物価指数で所得階級別の実質所得を計算し、所得格差の変化を考えようというのが、論文の趣旨だ。その結果、アメリカでは、低所得者が購入する商品の価格は大きく下落したのに、高所得者が購入する商品の価格はそれほど下落していないことが示される。そうすると、低所得者の実質所得は大きく上昇したのに、高所得者の実質所得はそれほど上昇していないことになる。それで、見かけの所得格差の拡大ほどは、高所得者と低所得者の生活水準の格差は拡大していない、ということになる。低所得層の物価指数が下落したのは、グローバル化とウォル・マートのおかげだという。
日本ではどうだろうか。第一生命研究所の永濱利廣氏が「低所得者を苦しめる物価の二極化」(短いバージョンはこちら)で似たような分析をしている。この結果は、アメリカの研究とは逆に、低所得層の消費者物価指数の方が、高所得層の物価指数よりも上昇していることを示している。もう少し長期の分析も知りたいところだ。
この分析が正しければ、日本ではみかけの所得格差以上に、生活水準の格差が拡大していることになる。日本の消費者がグローバル化の恩恵を十分に得ていないことが、その原因だ。格差対策に、規制強化や反グローバル化を唱える人が多いが、逆に、そうした政策は、実質的な所得格差拡大をもたらすことになるのではないか。
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